特別√、紀村陽介 ページ13
「あ……出かけるならみんなにちゃんと伝えてからにしないと」
「んじゃ、パパっと済ませちゃおうね〜」
ひょいっと、私を俵のように持ち上げた。
「！？」
どこにそんな力が！？
というかこの抱え方する意味よ！
「ちょ、紀村さん！？」
涼しい顔で、バルコニーから会場に戻る。
そんな状態の私達が目立たないわけもなく、背を向けていたが、会場内がざわついたのが分かった。
「おいアンタ何してんだ！」
「ちょっと彼女借りてくよ」
「は！？ふざけんな何を……」
「じゃあ行こうか。しっかりつかまっててねー」
みんな(主に灰崎)の抗議をあしらい、紀村さんは肩に担いでいる私を再度ぐっと両手で固定し、会場から抜け出した。
「「「あー！」」」
「A！」
「待て！」
「逃っげろー」
その逃げ足の速さは大したもので、顔は見えないが、紀村さんの声は何だか楽しそうに聞こえた。
一同が紀村を追い部屋から出た時には、二人の姿は見えなくなってしまった。
「くそっ……」
他の者が悔しそうな声を上げる中、ベルナルドは一人俯いていた。
「………」
無論、悲しみではなく、怒りゆえに。
それに気づいた部下は恐る恐る尋ねた。
「あのぅ……いかが致しますか？」
「追え」
「はっ、はいぃ！」
レンタカーが街中を走る。
「もっと他にやり方ありましたよね！？」
「あっはっは。楽しかったねえ」
私は助手席から抗議するが、紀村さんは運転しながら笑っている。
「怖かったですよ！いい大人に担ぎ上げられる側は！」
「それは失礼。抵抗の意がないと判断してしまったよ」
「……普通に言えばみんな許してくれたと思うのに、何でああ目立つような真似を」
「僕は職業柄、恨みを買うのは慣れっこだからね」
「洒落になりませんから……」
「わあー綺麗…！」
私達が来たのは、海の上にかかった車道橋。
昼間は海の青さがしっかり分かって綺麗さがあるのだとか。
しかし夜は夜で夜景の光が海に反射して、また違う綺麗さがある。
「よくこんな場所知ってましたね。この辺詳しいんですか？」
「いや？初めて来るところ。でも、ロシアの街に関する記事を見てここを知ってね。いつか来てみたいなと思ってたんだ」
「……こういうところって、恋人と来るのが正解なんじゃないです？」
「そうかな？」
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歌姫 - 楽しく読まさせていただいています。アレスの天秤も読みたいのでパスワード教えてもらえませんか？ (7月30日 23時) (
レス) @page15 id: a1c8bee84a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年7月27日 2時
