特別√、紀村陽介 ページ12
これは、チョウキンウンズ内パーティーの最中でのこと。
「やあやあ！ 久しぶりだね諸君。元気にしてたかな？」
そう言って明るく入ってきた姿を視界に入れた途端、灰崎は露骨に嫌な顔をした。
「何でテメェがここに！」
「いわば世界を救ったチームのオフなんて、ネタにならないわけがないだろう？」
彼は突然会場に現れた。
記者を務めている紀村陽介さんだ。
私は風に当たる為にバルコニーに出た。
案の定、その後を追ってバルコニーに来た人物がいた。
「いやあ、今日は誘ってくれてありがとうね」
「誘ってはないです。前にたまたま会った時、開催日時と場所を聞かれたので、正直に答えただけです」
「僕が来ること分かってて教えてくれたくせに」
「どうせ私が答えなくてもどうにかして嗅ぎつけて来ましたよね。このパーティーのことも、どこでどうやって知ったんだか」
「僕の情報収集能力をなめてもらっちゃ困るね」
紀村さんは柵にもたれかかっていた私の隣で、グラスに入った水を一口飲んだ。
「チョウキンウンズの打ち上げ……つまりこのパーティーが終わったら、今度こそ本当にみんなとは疎遠になっちゃうかもね」
「嫌なこと言いますね……」
意地悪なところは変わってない。
「大丈夫です。きっといつでも会えますから。仕事であちこち飛び回って忙しい紀村さんは分かりませんけど」
私も少し意地の悪い言い方になってしまった。
「それ、僕と会えなくなるのは寂しいってことかな？」
そんなおめでたい解釈する人でしたっけ？
「……まあそうですね。紀村さんとも、もっと仲良くなれたらよかったですね」
もう彼のことを知る機会なんて、そう訪れない。
そうしたら、お互いの存在を忘れていくのだろうか。
「今からでも遅くないさ」
「え？」
「西村さん」
「はい」
「ドライブに行こうか」
「……えっ！？ 今からですか？」
「うん。レンタカー借りて来てるから」
「えぇと……どこに？」
「行ってからのお楽しみ」
私はしばし考えた。
海外の街をドライブ。
楽しそうでしかない。
紀村さんのようなしっかりした大人の男性となら、危ないことにはならないだろうし。
「どうする？」
「い、行きたいです！」
「……う〜ん、素直なのは大変よろしいけど、君のそういうとこ、おじさんちょっと心配になっちゃうな」
「おじさんというか、私の中で紀村さんは近所のお兄さんみたいな感覚で」
「あはは、言うねえ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
歌姫 - 楽しく読まさせていただいています。アレスの天秤も読みたいのでパスワード教えてもらえませんか？ (7月30日 23時) (
レス) @page15 id: a1c8bee84a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅葉 | 作成日時：2023年7月27日 2時
