１３ ページ13
.
どうしよう。斜め向かいのこねしま様がすごい話しかけてくる。双方嬉しそうだからいいけど私がお嬢さん方と話しててもめちゃめちゃ話しに入ってくる。咀嚼よりも会話にばかり口を使ってるせいでお皿に乗った料理が全然減ってないよ。
そしてトントン。真横に座る彼の眉間には深いシワが刻まれている。もうそろそろカムチャッカ海溝の深度をマークするのではといったところで、通常の10倍は呼ばれた名前をまた呼ばれた。
「あっAサンAサン、ここの出汁巻き玉子全然ちゃうと思わん？俺何回も何回も言ってんのよ？やっぱ出汁巻きは出汁が効いてんとおかしいやろ、出汁巻き玉子の出汁が甘いって俺の知ってる出汁巻き玉子とちゃうもん」
「そ、そうなんですか」
「トントンはどっち派なん？」
「ボクはどっちでもええですね。それよりコネシマさんははよ食べてください」
大盛りによそったお皿をいくつも並べ、圧巻の食事風景を見せていたトントンの手元には食堂で1番人気のグラタンしか残っていない。いいなぁ。私が並んだときには売り切れてたから泣く泣く諦めるしかなかったんだよね。ちょうどトントンたちが来たタイミングで補充されたんだろう。
「どうしたん？」
「あっ、ごめん！…なさい！なんでもないですの！お気になさらず！」
やばい見すぎた。気付けばショーケースに張り付く子供かってぐらい見続けてしまっていたかもしれない。慌てて首を振るとトントンがグラタン皿に手をかけた。
「あぁそうか、Aはグラタン好きやもんな。まだ手ぇ付けてへんし食うか？」
その瞬間、こねしま様がニタァっと笑った。反対隣のお嬢さん方がきゃァと色めき立つ。ただグラタン皿をもらっただけでこんな反応が巻き起こるのは、恐らくトントンがこちらに顔を向けたから。お嬢さん方にはこの柔和で慈悲深い笑みが私越しに見えたんだろう。
「あ、ありがとう、ございます…」
「ええんやで。シッマ、俺飲み物取ってくるわ」
いってらー、と席を立つ背中を見送るこねしま様。私とトントンを交互に見て、時折漏れる特徴的な笑い声とニヤニヤが止まらないようで。
「んーふーふー。いやええなぁ、見せつけてくれるやんけ」
「何がやねん」
ご機嫌に唐揚げを頬張るこねしま様と当たり前のように私の分まで飲み物を持ってきたトントン。どこぞの怪鳥かと思うようなアーーーーーーッと本日最大級の予備動作をつけた大笑いが食堂に響いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1079人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまぎ(プロフ) - linkeaさん» 心に染みるコメントありがとうございます！tﾝ氏の妥協の産物ﾛﾎﾞﾋﾟｯﾋﾟですが自分で想像して可愛いと悶えたりもしました。彼には是非あざと可愛い行動をして欲しい…！こちらこそ楽しく読んで頂けるのめちゃめちゃ嬉しいです！今後ともよろしくお願いします！ (2021年2月21日 16時) (
レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
linkea(プロフ) - 楽しく読ませてもらってます！！19話目のピッピの流れめっちゃ好きです笑 こんなにも面白い話ありがとうございます！ (2021年2月20日 12時) (レス) id: b1d2253538 (このIDを非表示/違反報告)
あまぎ(プロフ) - ゆりおとめさん» そこに触っていただけるとは！ナカーマです！自分からは好きな人に好意を持って接すれるのに好意を持った相手から好意を向けられると嬉し恥ずかしになってしまう、そんなトnさんを推したくて書いてるので反応頂けて嬉しかったですー！コメントありがとうございました！ (2020年10月2日 19時) (レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりおとめ(プロフ) - 10話の「自分からは行けるけど、夢主から来られると挙動がバグるtn」にmoeました。 (2020年9月30日 22時) (レス) id: 01e13c464f (このIDを非表示/違反報告)
ゆりおとめ(プロフ) - 好きです (2020年9月30日 22時) (レス) id: 01e13c464f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あまぎ x他1人 | 作成日時：2020年1月9日 18時
