青春１２.LINEの名前は個性が出る ページ13
「それにしても、コッソリ渡す理由って何なんでしょうね」
鍵を手に持ち、それを眺めた。
傷一つない新しい鍵だ。
「太宰のことだ、何か企んでいたんだろ」
「企んでって…一体何を―――あ」
心当たりがあり、ポケットから例の紙を取り出す。
それを乱歩先輩に渡すと、「あァこれか」と1人で納得していた。
何か知っているらしい。
「これ、太宰のだよ。LINEのID」
「普通に教えないんですね。警察に通報するとこでした」
「でも、何で判ったんですか？」疑問をぶつけてみると、けろりと答えた。
「僕も太宰と繋がってるからね」
「…IDって覚えるものですか？」
「知らない。僕の場合、記憶にあっただけ」
どちらにせよ凄ぇよ。
安心したところでLINEに登録し、早速送ってみた。
A登録しましたよ、太宰先輩
少しの間のあと、既読が付いた。
そしてポコンという音を出して返信が来た。
太宰治は心中したい有難う。よく私だと判ったね、Aちゃん
名前がとても気になったが、気にしない事にした。
本当に太宰先輩だったことに安堵し微笑むと、乱歩先輩が誇らしげに「ね？」と云ってきた。
「はい！有難う御座います。乱歩先輩！」
「どう致しまして」
またポコンと音がした。
太宰治は心中したいもしかして乱歩さん?
Aはい。乱歩先輩が教えてくれました
A普通に教えてくれても善かったじゃないですか
私が文句を送ると、直ぐに返ってきた。
太宰治は心中したい済まなかったね。ちょっとした悪戯心だったのだよ
「怖かったかい？」と付け加えられたLINEに、見栄を張って「少し」とだけ返した。
すると、
太宰治は心中したいじゃあ私の企みは無事成功したという事だね
と返ってきたので、猛烈に腹が立った。
「クッソ…嵌められた」
「ねぇねぇ、僕とも繋がってよ」
悔しがっていると、乱歩先輩に声をかけられた。
振り向くと、スマホを片手にこちらを見ていた。
「いいですよ。繋がりましょう」
LINEを交換し、お互いに確認し合うと早速誰かを紹介された。
「え、これ誰ですか？」
「福沢さん」
いやいや、私の中の福沢さんが壊れてしまう。
福沢さんのイメージが…。
紹介された人の名前を見る。
そこにはこう表示されていた。
《猫好きの代表》
脳内で福沢さんが猫になってしまった。
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作者名：入浴 | 作成日時：2018年3月12日 23時
