神の名の下【企画小説】 (ページ10)

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彼女の朝【風亜】ページ10

眠るといつも同じ夢を見る。
アタシが風に溶けて周りから認識されなくなってしまう夢。
もう何度も何度も、数えきれないほどに見てきたから「ああ夢だ」とわかるまでになってしまった。

その夢の終わりはいつも唐突。
とうとうアタシという自我が消え去ろうとする、その時に、軽やかな目覚まし時計の音でアタシは目を開けるのだ。

ピピピピ、ピピピピ。

パチッと瞼を上げる。
ベットの上で身を起こし、うんと一つ伸び。

自慢じゃないが、寝起きはいい方なので、それだけで頭が冴えたアタシは、ぺたりとひんやりとした床の上に足を落とした。

鏡の前で身支度を整える。
まずは顔を洗って、はみがき。
そして白髪に緑色のグラデーションがかかった不思議な髪をとかしてぴょこぴょこと跳ねさせる。
んっと唇を突き出すと、うすいピンク色のリップを縫って、制服に腕を通す。
愛用のサイズが大きいパーカーを羽織れば、いつものアタシの完成だ。

鏡の中のアタシは、白目のない緑色の目をぱちぱちと瞬いた。

この髪の毛も、目も、それから背中の羽も、あまりよい気分では見られないようだが、それでも、だからこそ、アタシだけはこんな自分の姿が気にいっている。

「……よーし」

にっこりとアタシは笑みを作った。

今日はどんな楽しい一日になるだろう？