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魔法の呪文【風亜】 ページ19

「たっつみーーーー!!」

いつものように後輩の背中に飛びついた。細身だけど引き締まった体は、アタシを受け止め損なうことはないと知っている。今日はフラつきもしなかったので、すごいなーと思った。体幹が鍛えられてるのかな。

「先輩……だからあんまり触らないで下さいって言ってるじゃないですか」

困ったような声も内容ももうお馴染みとなったものだ。聞き入れないことなんて分かっているはずなのに、辰巳もこりないなあと笑う。そうして背中から降りて辰巳の前面に回ると、アタシは目をパチリと瞬きさせた。

「なんか元気ないねー」
「え、」

まさか気づかれるとは思っていなかった。そんな風に驚いている辰巳の両頬に触れる。チリリ、と僅かに痛みが走った。

「ちょ、せんぱ」
「ねえ辰巳」

文句など言わせるものか、ととびきりの笑顔で封じる。辰巳は黙った。ふふふ、勝ったぜ。

「アタシの名前を呼んでよ!」

ニコニコしてそう言ったら怪訝な顔をされた。アタシはめげずにむにむにと辰巳の頬を揉みながら急かす。

「ほら早く〜!」
「え、えと……風亜、先輩」
「ぶっぶー! だーめ! 先輩はナシ!! はいもーいっかい!」
「うぇぇえー…………ふう、あ……」
「もう一回!!」
「な、何なんですかこれぇ……風亜」

躊躇う辰巳にぐいぐい迫るアタシである。辰巳が後ろに余計なものをつけず、かつどもらずに言えるようになったところで満足して頷いた。何だかんだ辰巳に名前であまり呼ばれたことがなかったので新鮮に感じながら、次のステップに進む。

魔法の呪文【風亜】→←キス、とか【大地】



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作者名:氷渡ミオ | 作成日時:2017年10月9日 16時

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