キス、とか【大地】 ページ17
「なあなあ、大地と彼女さんはどこまでいったんだ?」
そんな一言が投げかけられたのは、とあるファストフード店の中。
大地は食べていたポテトをのどに詰まらせてむせる。
「えっ、なっ……え?」
「あー、それ俺も気になる。ちなみに俺んとこはCな! 最後までばっちりだぜ」
「ABCとか……古っ!」
戸惑う大地をよそに会話は続けられる。
この派手目なグループではいつもの事だが、高校デビュー組の大地はたまについて行けなくなることがある。そう、今のようにだ。
「で、どうなの?」
ずいっと顔を寄せられて、大地は「えっ……えっとお」と声を漏らし、近すぎる友人たちの顔を押しのけた。
そうしてそっぽを向き、ジュースをすすりながらポツリ。
「デートはした」
「……うん?」
場が静まり返る。
大地の友人の一人が訊いた。
「デートはって……まさかキスもしてないのか?」
「……おう」
ずずずーと大地のジュースを飲む音だけが響く。
また一人がおそるおそると言った様子で尋ねる。
「手は? 手はさすがにつないだだろ?」
「……まあ?」
まあってなんだまあって!
友人たちは揃って思った。
「大地……さすがにそれはないだろ。うぶかよ」
「だってさあ……先輩が嫌だったらとか思うとな……嫌われんのややだしい」
ぐでんと机の上につっぷす大地。
つまるところ大地は怖いのだった。
友達のような関係から始まった交際であるがゆえに、恋人のような振る舞いをして、今の心地よく楽しい空気が崩れてしまうことを恐れている。
「だーいじょうぶだって。大体手を出さないのも案外不安がらせるもんだぞ?」
彼女持ちの一人が言う。
「そういうもんかあ?」
いぶかしげに聞く大地にいい笑顔で頷く友人。
「そういうもん! 今週中にキス位頑張れよ!」
「えええ」
ぐっとサムズアップして、友人は勝手にそんなことをのたまう。
「それいいな! 大地頑張れ!」
「賭けしようぜ賭け! 出来るかできないか!」
がやがやと自分をそっちのけにして騒ぎ始めた周囲に、顔を真っ赤にして大地は叫ぶ。
「俺と先輩で遊ぶなあ!!!!」
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作者名:氷渡ミオ | 作成日時:2017年10月9日 16時