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シルフとサラマンダー【風亜】 ページ11

学校につくと、校門近くに、見慣れた後ろ姿。
綺麗な黒髪を、アタシよりも長く伸ばしている、男の子。
後輩の火影辰巳だ。

アタシはその背にニッと笑いながら飛びついた。

「たーつみっ! おーはーよー!!」
「わっ」

それなりの距離から抱きついたからか、辰巳の体が揺らぐ。
しかし案外鍛えている後輩は、倒れることなくアタシの体重を受け止めきった。
アタシに蝉のように抱き着かれたまま、ふう、とため息をつく彼。

「おはようございます。朝から元気ですね、先輩」

苦笑気味のその声に、顔が見たくなってアタシは張り付いていた背中から飛び降り前面に回る。

「うんっ、アタシはいつでも元気だよ!」

にこにこと笑いながら見た後輩の顔は、困ったようなものである。
それが何だか気に入らなくて、笑えばいいのになんて思いながら彼の頬に触れた。

「ちょっと、先輩……何度も言ってますけど痛くないからって僕に触るのはよした方が」
「わはーっ!」
「わはーっ、って」

聞き飽きたその台詞を、笑いでさえぎって、うりうりと辰巳の頬を揉んだ。

でもさ、だってさ、やめた方がいいなんて言いながら、辰巳はこうすると少し嬉しそうなのだ。
だから私は触れた頬からちりちりと伝わる痛みを伴う熱に耐えられる。
絶対に笑顔を崩さずにいる。それで寂しい彼の心が安らぐならば、彼が喜ぶならば。

アタシはにひ、と強がりではない、本心からの笑顔で笑う。

「大丈夫だよ! アタシ怪我しないからね!」

――ただ、痛みも感じないわけではないけれど。

きっと後輩は痛くもないのだと思っているのだろう。
そう思わせているのはアタシだし、一生気づかないでいてほしいと願う。

アタシはわたわたしている後輩の頬を自然とこぼれる笑みのままいじり倒すのであった。

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作者名:氷渡ミオ | 作成日時:2017年10月9日 16時

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