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面白い人【ミケ】 ページ1

ミケはその日の放課後暇を持て余していた。
なぜなら部活が無くなってしまったからだ。
生徒会からも特に連絡が来ていないし、今日はやることがない。

どうしよう、と考えて、あることを思い付いた。
にんまりと笑う。

「そうだ、女装しよう」

そうと決まればと寮に入って女物の服を引っ張り出した。
別に女性になりたいわけではない。
ただむさくるしい男子校のノンケどもを騙くらかすのが楽しいだけである。
ぴょんぴょん跳ね放題の髪を梳り、トレードマークのイヤーカフを外す。
そして花柄のロングスカートにゆったり目のトップスを着れば完成だ。
メイクは色つきリップを塗るだけにとどめる。そんなに気合を入れて女子になりたいわけではないから。

そうして鏡の前でくるりと回ってみせる姿は、われながらなかなか女子らしく見えた。

「さあて今日は誰が騙されてくれるかなー」

軽い口調と足取りで、誰にも見つからないように校門の前に向かう。
にやにやと怪しげな微笑を不安げな表情に変えて、所在なさげな様子で立ちすくめば、学園の生徒を待つ女の子の完成だ。
わくわくとした雰囲気が漏れ出てしまわないように、きょときょとと視線を彷徨わせていると、背後から声をかけられた。

「ねえ、君可愛いね。僕と一緒にお茶でも飲みに行かない?」

来た。
そう思って内心でにやつきながら、その聞き覚えのある声音に首をかしげる。
あれ、この人って……と思いながらゆっくりと振り向き、

「人探してるんなら僕も一緒に探すけ、ど……」

そこにいたのは濃い青の目を見開く藍色の髪の男子。
彼はミケの顔を見ると顔を歪めた。

「ってまたお前かよ!!!!」
「ぶはっ、し、深夜くんじゃんやっぱり!!」

くっそまた騙された! と膝をついて嘆く彼にミケは笑いをこらえることが出来ない。

「あひゃひゃひゃし、んやくんっ僕に引っかかるのこれで何回目!? 僕の記憶だともう十回は超えてると思うよっふふ! やばいくっそ面白いくくくっ」
「うるさいお前のせいだろーが……!」
「何? 僕が可愛すぎるせいだって? ぶっふぉ、ほ、褒め言葉どうもっ!」
「褒めてないですけどー!? くそお後ろ姿でわんちゃんあるかもとか声かけるんじゃなかった……! 確かに見覚えのある髪色だなとは思ったけど……っ!」
「あっはっはっはっはげっほごほっうえ」
「笑いすぎだろ!!」

ミケは思う。
――一体いつになったらこの子僕の女装に気づけるようになるのかな?

答えは神のみぞ知る。

彼の話【ミケ】→



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作者名:氷渡ミオ | 作成日時:2017年10月9日 16時

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