33話 ページ36
1週間は早く来てしまうもので…。
すぐ当日となった。
馬車に揺られて、外を眺める。
少々姿は変わっていても、入っていく森の情景はほとんど変わらない。
段々と家に近づくたびに心音が高鳴る。
とうとう家が見えてきて、水穂は深呼吸をしてから坂田がエスコートしてくれた手を取り馬車を降りる。
「…懐かしい。」
家の壁の色は少し色あせている。
でもほとんど変わらない。何もかもが変わっていない。
どんな形でも、ここが水穂の生まれ育った場所。
ずっとどこにあるか分からなかった、帰りたかった家。
あとは
「お父さん、お母さん…」
両親の姿を探す。
木のドアに近づき、手を伸ばしてノックを3回。
そうすれば、返ってきた懐かしい声。
もう少し、もう少ししたら、会える。
ずっと会いたかった人に。
ガチャ、扉が空いて、現れたのは女性だった。
紅葉のように紅い瞳、少しシワが増えた顔、優しい声、着ているのはエプロン。
間違いない。水穂の母親だ。
「ただいま、お母さん…」
泣きそうになって、一番最初に絞り出した言葉だった。
「水穂?水穂なの?」
女性__水穂の母親も目を大きく見開き、水穂の手を握る。
「そうだよ。水穂だよ。」
溢れ出した涙はつたって地面に落ちる。
それは水穂の母親も同じだった。
「お父さんも喜ぶわ。
今出かけているけど、すぐ帰ってくるわよ。」
そう言うと、水穂の後ろに目配せして、母親は後ろにいた彼の目の前まで歩いていき、その場に跪いた。
「ありがとうございます。
もう二度と会えないと思っていた娘に会わせていただき…」
見慣れないその光景に、水穂は驚いてしまった。
そしてふと思い出す、彼は上級貴族だということに。
「やめてください。俺も水穂に会いたかったんです。」
坂田は母親を立たせた。
その時、また違う声が聞こえてきた。
「水穂、なのか…?」
「お父さん!」
赤毛の犬耳が覗く頭と、成長した水穂でもまだ大きいと感じる体。父親だった。
力強く、抱きしめられて水穂は少し幸せを感じる。
「水穂、こんな可愛くなって…!」
「お父さん、痛いから!嬉しいけど!」
すると、そんな3人の前に坂田は真面目な顔をして、立った。
「…水穂を今回お二人のところに連れてきたのには他にも意味があるんです。」
水穂も聞かされていない、内容に、水穂自身も心臓がぎゅっと握られる思いだった。
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朧月天音(プロフ) - ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫))さん» ありがとうございます。最近界隈が騒がしい状態でルールを守らない方が一定数いらっしゃったので更新を止めて離れておりました。今日から少しずつ出していく予定です。心配すみませんでした( ՞ 💧ᴗ ̫ ᴗ՞) (8月14日 14時) (レス) id: b60a9fb89a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (6月21日 18時) (レス) @page37 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2021年1月14日 23時