32話 ページ35
水穂の母親の記憶は…、優しい人だった。
怪我や病気になってしまった水穂をつきっきりでずっと看病し続けてくれた。
魔法使いで、善し悪しの判断がすぐできる人だった。
料理も美味しくて、水穂が思い出す母親の姿はいつもエプロンをつけていた。
赤髪にルビーがはめ込まれた綺麗な瞳。
落ち着いた声で、水穂を包んでくれた優しい母親。
父親も、母親と同じく優しい人だった。
水穂と同じ狼系獣人。力も強く、森の知識が多くあった。動物と会話ができ、好きな食べ物は甘い樹木の果実だった記憶を水穂は覚えていた。
どれも12年前の朧げな記憶。
今2人がどうなっているか水穂は分からない。
元気に暮らしているのかもしれない。
もしくはもう…
「…私の事、覚えてるのかな?」
ぎゅ、と拳を握る。
会えたとしても、もし覚えていなかったら?
ただ気まずくなるだけ。
「水穂の両親は、本当に水穂想いなんやね。」
ふと、坂田からの言葉に顔をあげる。
話が噛み合っていない。
すると、坂田は小さい引き出しから1通の封筒を取り出した。
「水穂が会いたいって言うと思って…。
いや、そうやないんやけどな。
水穂を探している時、水穂は本当の両親の元へ向かったのかと思ってん。
やから、水穂の両親を先に探してコンタクトを取ったんや。
結構時間かかったんやけど…、水穂はいなかった。
逆にどこにいるのか教えて欲しいって聞かれたんやから…」
その封筒を差し出され、水穂は恐る恐る中を開けて読んでみる。
「っ…!」
それは両親から、坂田への手紙だった。
水穂はどこにいるのか、会わせて欲しい、もし見つかったら連絡してほしい。
そう手紙には書かれていた。
「おとーさん…おかーさん…」
「…水穂のこと、ずっと探してたみたいやで。
居なくなった日から、つい最近までずっと…」
また、目の前が滲む。
雫は水穂の頬を通って、坂田の指に拭われた。
「実はな、1週間後に会う約束立てたんよ。」
水穂は驚いて顔を上げた。
また、会える?両親に?
「え…」
「サプライズ!なんかな?」
「ありがとう…。」
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朧月天音(プロフ) - ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫))さん» ありがとうございます。最近界隈が騒がしい状態でルールを守らない方が一定数いらっしゃったので更新を止めて離れておりました。今日から少しずつ出していく予定です。心配すみませんでした( ՞ 💧ᴗ ̫ ᴗ՞) (8月14日 14時) (レス) id: b60a9fb89a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (6月21日 18時) (レス) @page37 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2021年1月14日 23時