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30話 ページ33

「んぁっ…」
「甘っ」

身体がシーツに沈み、首筋に鋭い痛みが走る。
それはすぐに甘い痺れへと変わり、水穂の身体全体へ広がった。

「はぁ…、可愛い。ほらこうしたらさ」

ぺろり、水穂の首筋に舌が這う。

「ひぅっ…!」
「声あげて震えちゃうんやもん。かわい〜」

吸血だけじゃ気が済まないようで、坂田は甘噛みしたり、舐めたり、を繰り返していた。

暫くして満足したのか、水穂の唇にキスを落とす。

「契約、して良い?…って言っても仮やけど…」

水穂の髪を撫でて、坂田は水穂に答う。
坂田のその手を掴み、口元に近づけると彼の人差し指を食む。

「良いよ。」
「はっ…、
マーキング取れたら絶対すぐに本契約するからな?」

ガリ、と坂田は自身の腕を噛み、血を吸い取ると素早く水穂の首筋に噛みついた。

「…っ!」

インクが紙に落ちて広がるように、噛まれた傷口から一気に温かいものが身体中に広がる。

片手を指と指が絡むように繋いで、ぎゅ、と掴んだ。

自分が自分ではなくなりそうで、なんだか飛んでいきそうなくらい、幸せで少し怖かった。

また肌を舐められる感覚がして坂田とゆっくり目が合うと、驚いた顔をされる。

「水穂、痛かった?」

目尻からいつの間にか流れていた水月の涙を坂田は拭う。

「…え?あれ…どうして…?」

気づいた瞬間、視界がじわりと滲んで空に涙が溢れ出してきた。



あぁ、そうだ。
自分が幸せになると、すぐに嫌なことが襲ってくる。

それは心の隅で分かっていた。

自分は今幸せだから、それと同じくらいの不幸が降りかかるに違いない。

身体が、心が、そう訴えている。
幸せが怖い。

坂田ともう一度出会えた、そのことだけで人生で1番の幸せだろう。

だが次は恐怖のどん底へと…




「水穂。」

ふと、そんな思考を遮られて紅い瞳と目が合う。
坂田の瞳は水穂の瞳を捉えて離さない。

「…俺は水穂といられるだけで幸せやで?」

それは水穂も変わらない。
ただ、彼のそばにいたい。

「私も、離れたくない…。でも、」

水穂はレッスンをやっていてふと気づいた。

自分は彼に釣り合っているのだろうか?
紗奈や紫姫のように貴族の者としての血筋を引いていない自分は、彼の隣にいて良いのだろうか?

「俺は水穂が良い。
逆に水穂じゃないと嫌や。」

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設定タグ:浦島坂田船 , となりの坂田,あほの坂田 , 歌い手   
作品ジャンル:恋愛
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朧月天音(プロフ) - ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫))さん» ありがとうございます。最近界隈が騒がしい状態でルールを守らない方が一定数いらっしゃったので更新を止めて離れておりました。今日から少しずつ出していく予定です。心配すみませんでした( ՞ 💧ᴗ ̫ ᴗ՞) (8月14日 14時) (レス) id: b60a9fb89a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (6月21日 18時) (レス) @page37 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2021年1月14日 23時

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