招集の後。 ページ9
棗は少し咳き込みだした。
「…棗、部屋に戻りなよ」
そう言っても棗は動かない。
腕を引っ張っても体を押してもびくともしない。
『…』
無言で見つめ合うこと数分。
遠慮がちなノックの後、扉の向こうから顔を出したのは流架だった。
「ご飯できたって、あれ?棗とよーちゃんもいたんだ…って何してるの2人とも」
無言で見つめ合う私たちを見て流架は、喧嘩?と言いながら近づいてくる。
「こいつ、任務してること、隠してやがった」
棗の言葉の意味がすんなり理解できなかったのか
流架は数泊黙ったあと、え?って言ってズカズカ歩いてくる。
「任務って、なんで…千華は特力だろ」
困惑したように私の前で立ち止まる流架。
「表向きはね、本当は危力系だよ。私」
信じられないのか、信じたくないのか流架は
「嘘だよね?2人して俺のこと騙そうとしてるんだろ?」
「ほんとだ。さっき俺も聞いた」
棗を見て、嘘じゃないと理解した流架は泣きそうな表情を見せる。
「なんで…」
「泣かないで流架、別に私は全然大丈夫なのよ?」
棗と違って1人での任務じゃないし、危ない時は瑠衣ちゃんが助けてくれるし。
危険度で言ったら1番低い任務しか回されていない、今のところは。
ついに涙を流し出した流架に困惑して、棗に助けを求めると
またもやふいっと顔を逸らした。
自分でどうにかしろと言わんばかりに。
結局流架が泣き止むまで待つこと数十分後。
散々、流架から説教をされました。
背後の棗は言ってやれ、流架。と言いながら援護するし…。
途中で陽一が起きたことで、2人の攻撃は終わり、
夕飯の時間もあるからと食堂に向かう。
若干不機嫌な棗と泣いたとバレバレな流架と
寝起きの陽一と陽一を抱く若干顔が死んだ私というアンバランスな面子に
何があったんだと、しばらく初等部ではその真意について討論される日々が続いたが…
私たちはその話題について何も言わないでいた。
部屋に戻る前、流架には渋々ごめんと謝ると流架はまだ少し怒っていたようだったけど
許してはくれた、はず。
棗と2人で無言の中廊下を歩いていると部屋が近づいてくる。
私がドアノブに手をかけて、棗におやすみ。と声をかけて中へ入ろうとすると、
「…何かあったら言え、隠し事…してんじゃねぇよ」
と棗は若干しかめっ面のまま言うと、部屋へ入っていった。
流架といい棗といい、私は2人を結構怒らせたし、心配させてしまったらしい。
56人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:臨楽 | 作成日時:2020年11月6日 0時