『学園アリス』私と雪と赤い彼。-日常編- (ページ34)

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逃げる。ページ34

しばらく3人でこの木から見える景色を眺めていた。

「…。脱走」

『え…』

2人が驚いたように見てくる。

「聞いてたの?」

流架を見て、私は口元を緩める。

「最近の2人、とても息が詰まってるようだから」

『…』

最近になって棗へのあたりはさらに酷くなっている。

私が一緒にいないときも、2人はきっと、暗い、醜い感情をぶつけられている。

「…少しくらい、息抜きするのも悪くないんじゃないかしら」

そう言うと棗と流架は驚いたように目を見張る。

「2人は外を知ってるから。その分この学園はきっと窮屈でしょ。
　この学園は異質なものにはとても…残酷なところだから」

「…何を」

「…人によっては風当たりが強いところだから」

同じ危力系の、女の子を思い出しながら私はただひたすら真っ直ぐ前を見つめる。

視線を上に向けると生い茂った葉っぱの隙間から日差しが差し込んで、眩しい。

「…2人が逃げたいって思っても私は止めたりしないわ。

　だって2人の自由だから」

止める権利は誰にもない。

2人が何も言わず、静かに見つめてくるのを肌で感じる。

さわさわとそよぐ風が私達の隙間を縫って吹いていった。