夏のあるひととき。 ページ24
何なんだこれは…、と燃え切った手持ち花火を見つめていると
駆け回っていたキツネ目と心読みが駆けつけてきた。
彼らの話によるとそれは2人がセントラルタウンで見つけて用意した花火の1つだったらしくて
ランダムで花火の勢いが違うタイプのものらしかった。
確かに委員長やアン、ののが持つ同じ種類の手持ち花火は穏やかに燃えている。
「当たりを引いたと思えばいいんじゃない?」
といつの間に持ってきたのか、
巨大なスイカを食べながら背後に立っていた蛍にビクッと驚く私達。
棗は自分の手に持つ花火を黙って見つめていた。
「ねぇ流架」
「何?」
「火をもらいに行かなくても、近くに火元…あったわね」
「…あー」
棗のアリスが炎だということを思い出して私達は黙々と花火を水が張られたバケツに入れた。
棗のもとに戻るとまだ火をつけていなかったようで、
蛍や委員長達が静かに見守っている。
「…」
私達も静かに見守っていると、棗の持つ花火にがついた。
私達のように激しく燃えるんじゃないかという周囲の期待は華麗に裏切られる。
パチパチパチパチッ
「…」
『…』
棗の持つ花火は線香花火よりも弱々しい火花を散らせて
ボトッ
すぐに落ちた。
「…」
「…フッ」
誰かがあざ笑うような声がする。
誰かは振り向かなくてもわかる。
口元にスイカの種をつけた蛍だ。
「…(イラァ」
シュッ
と謎の音がしたかと思うとすぐに爆発音のような音がする。
そしてあたりが明るく照らされる。
何事かと見上げると棗が爆発させたであろう炎のアリスの後。煙が宙を舞っていた。
「わー!打ち上げ花火だー!!」
「すごーーーい!!」
と皆が喜ぶ中、棗は呆然と立つ蛍に向けて、
「…ハッ」
とドヤ顔をしていた。
「…(イラァ」
その後蛍は部屋に数日引きこもって何やら発明品を作っていたらしい。と
委員長から聞いたのはそこからさらに数日経った頃だった。
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作者名:臨楽 | 作成日時:2020年11月6日 0時