3人目のトリプル。 ページ20
「いーまーいーさん♡」
寮の門の前で心読みとパペットごっこをしていた蛍が振り返る。
「…なんですか?」
「いや最近元気がないって聞いたもんだから
もし、何か悩み事でもあるんだったら先生に話してくれたらなー…なんて」
ナルに連れられてきた私と岬はただ黙って、ナルを見つめる。
…胡散臭い。
「蛍ちゃん、この人達。
上の偉い人に言われて蛍ちゃんがメカ作る気になるよう説得するように言われてきたんだよー」
「やりにくいなあオイ…」
ナルと岬からの視線を感じて私は蛍に手紙を手渡した。
あ、千華ちゃんも居たー。と心読みが柵を乗り越えてくるのをチラリと見て、
蛍へと視線を戻す。
「…元気のない君に今こんなこというのは何だけど
君宛に世界中の君のファンからこんなにオファーが来てるんだよ。
…蛍ちゃんの力をこんなに多くの人達が求めて待ってる。
そのことを君の心の元気に繋げることはできないのかな?」
ナルを見て、手紙を見て、最後にちらりと蛍が視線を送ってくる。
「…蛍が元気ないと、調子狂う」
背後から「おや」とか「お?」とか大人の声が聞こえてきたけど無視。
隣に来た心読みがニヤニヤしているのも無視。
「ね♡千華ちゃんもそう言ってることだし。元気だそー!」
「…」
「あ、ホームシックとかじゃなくて
もしかして恋愛方面?とかだったらもっと深く相談に乗ることも…♡」
「よさんかアホ」
調子に乗り出すナルを羽交い締めしながら岬が歩き出して2人は去っていく。
要件はもう終わりらしい。
しばき倒したい…。と蛍の顔に書いてあるように見えたけど…何も言わないでおこう。
手紙を読んだらしい蛍はしばらくの間、発明品を作るのに没頭していて
…たまに授業中も作業をしていた。
じんじんにはこっぴどく叱られているのを私と棗と流架は後ろの席から眺めていた。
しばらく経つと、蛍の調子は戻ったようで…
またいつものように
『…』
「ほ、蛍ちゃん」
「な、棗…」
「…」
いつものように…。
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作者名:臨楽 | 作成日時:2020年11月6日 0時