雨の日。 ページ16
「雨止んでるぜ!」
「よっしゃ!傘なくても帰れる!」
雨が止んだ外を眺めながらクラスの男子が走って教室を出ていくのが見える。
「…千華。一緒に帰りましょう」
委員長を連れた蛍が私の前で立ち止まって見つめてきた。
「いいよ」
そう言ってカバンに教科書を入れている間、棗と蛍がまた繰り広げていたらしいけど
最近スルースキルがついたのか、前よりも気にならなくなってきた。
これも慣れなのかもしれない。
帰り支度を整えて、席を立つと蛍が付いてくる。
「じゃ、棗、流架。先に帰る」
そう言うと若干不満げではあったけど…あぁ。と返す棗と流架を残して教室を出ていった。
外へ向かうと、数人の生徒が立ち止まって空を見上げている。
「みんな何してるの?」
「あ、いいんちょー、蛍ちゃん」
「千華ちゃん、今帰るのー?じゃ、一緒に帰ろーよ」
心読みやキツネ目、正田や持ち上げが振り返る。
「…いいけど、何してたの」
「この子達、本当に雨降らないのかって言って全然出ようとしないのよ」
「だって急に降ったらやじゃん」
「やじゃん」
「だからって降るまでここにいる気なの?」
正論を返す正田に心読みとキツネ目はブーイングを始める。
「千華さん、棗さんと流架君は一緒じゃないんですね」
「置いてきた」
そうなんですか、とだけ言うと持ち上げはじーっと見て
「鞄重くないですか、いつも分厚い本入れてるから…」
持ち上げは持ちましょうか。と聞いてくれたけど、
流石に人をパシリのように使うのは気が引ける。
棗はよく人をパシってるけど。
「大丈夫、気を使ってくれてありがとう」
「じゃあ、あたしの持って」
「…」
「ほ、蛍ちゃん…」
結局蛍の鞄を持つ持ち上げは根は優しい人物らしい。
「ほら、アンタたち!行くわよ。このままじゃキリがない」
と言いながら心読みとキツネ目を引っ張り歩き出す正田。
その後ろを歩く、持ち上げと蛍と委員長と私。
空を見上げるとどんよりとした雲がゆっくりと流れている。
「ほら、全然降らないじゃない!」
考えすぎなのよ、と正田が続ける前に
ザーッと滝水のような雨が私たちを直撃する。
「「「…。」」」
周囲に雨宿りできそうな場所はない。
正田が傘を開くと、心読みとキツネ目が傘の中に入ろうとする。
「ちょ、何。離れなさいよあなたたち!」
「傘忘れたー」
「俺もー」
「はぁ!?バカじゃないの!?」
そのバカに私たちも含まれているのだろうか…。
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作者名:臨楽 | 作成日時:2020年11月6日 0時