雨の日。 ページ15
それは梅雨入りして、雨続きだったある日の授業中。
じんじんの授業を受けながら、窓の外を見る。
外はどんよりとした雲が広がっていて、雨がしとしとと降り続いている。
「この公式を使って――」
じんじんの声を聞き流しながら私は静かにため息をついた。
「最近雨ばっかりでやになるよねー」
「じめじめするしさー」
「私クセ毛だから湿気で広がっちゃって困るんだよねぇ」
「帰るときには雨止んでないかなー」
授業が終わり、いつものように教室はざわざわと賑わいだす。
雪をなでると、湿気を吸っているのかいつもよりしっとりとした毛並みを感じる。
前の席に座る心読みがなぜかじーっと視線を送ってくる。
こういう時は何かしら言いたいことがある時だけど、大体ろくなことがないから
あえて無視している。
それでも構わず聞いてくるのが彼だったりもする…。
「千華ちゃん。じんじんの授業、退屈なの?」
「どうして?」
「さっきため息ついてたから」
聞いていたのか、と思いながら机に肘をついて、心読みを見つめる。
「読んでみなよ」
「…えー、千華ちゃん読めないよ」
しばらく心を読もうと務めた心読みはすぐに困ったように眉を下げる。
「なんでため息付いてたの?」
心を読むのを諦めた彼は直接聞いて確かめようとしてくる。
なんで、かぁ。
「何でだろうね、でもなんか雨の日はそんなに好きじゃない」
そう言って本へと視線を落とすと心読みはそっか、と言って席を離れていった。
なんだったんだ。
「…雨嫌いなのか」
「…起きてたんだ」
てっきり寝ていると思っていた棗の方を見ると、顔に伏せた漫画を手に取ってチラリと見てくる。
さっきの話を聞いていたらしい流架もこっちに視線を送ってきた。
「心読みの野郎がうるさかったからな」
それで、雨は嫌いなのか。と質問を繰り返されて、本を閉じて棗と流架を見返す。
「好きじゃない。雨の日って憂鬱になるって言うじゃない?」
多分そういうのだと思う。
棗はふーん。と言ってまた目を閉じた。
流架はまだ気になるようだったけどそれ以上深くは聞いてこない。
すぐにナルが教室に入ってきて、授業は再開される。
その間も、私は窓の方を見て、降り続ける雨を眺め続けた。
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作者名：臨楽 | 作成日時：2020年11月6日 0時
