嫉妬。 ページ11
そして授業が終わり、さっきのメンツは中等部へと向かっていた。
「…っぽいのいねーよなぁ」
「てかどうやって探すんだよ?」
「学年もわかんねーぜ?」
と言った感じで草むらの影から中等部の入口前を見張っている。
「ちゃんと捜しなさいよ!」
「うるせーパーマ」
キツネ目がすかさず言うとパーマこと正田がキツネ目をぐりぐりとしだす。
この場にいるのは
棗の取り巻き数人とキツネ目、正田、蛍、蛍に巻き込まれた委員長。
そして何故か、棗と流架。
数十分が経過しても、それらしい生徒は見当たらず、生徒達は早々に諦めて戻ることにした。
長い道を歩き、やっと初等部の寮が見えてきた頃。
「あれ、千華さんじゃないか?」
「ほんとだ、千華ちゃんだ」
「どこ行くのかしら?」
「あっちって北の森、だよね?」
「…」
この場にいた生徒の考えはこの時全員一致。
誰かが何か言うわけでもなく、その場にいた全員が千華の後を追いだした。
草陰から頭を出しながら千華の様子を見る。
「誰かに声をかけてるみたいですね」
木の上を見ながら千華は誰かに話しかけているように見える。
「あ!誰か降りてきたー!」
「アナタたちもうちょっとしゃがみなさいよ見えないでしょ!」
「押すなよパーマ」
「…棗」
「…」
「ふーん、アレが彼氏なの」
「ほ、蛍ちゃん…」
千華の前に現れた男は確かに中等部の制服を纏っている。
草陰からはよく顔が見えない。
ただ、隙間から見える千華の表情を見る限り、その相手はかなり親しいということはわかる。
千華は基本表情を表に出さない方だ、蛍のように。
ただ無表情なわけではなく、話せばそこまでの変化はなくとも表情は変えている。
「千華ちゃん、笑ってるー」
キツネ目は少し驚くように言う。
委員長がちらりと隣にいる蛍を見ると、千華を見たまま固まっている。
棗の取り巻き数人と正田も千華があんなふうに笑うのを見るのは初めてで、驚いたまま動かない。
その表情はずっと一緒にいたはずの流架や棗も見たことがないものだった。
「な、棗!?」
「棗君!?」
ガサガサと音を立てて、まっすぐ千華のもとへと歩き出す棗。
流架と正田が声をかけても、本人は構わず歩いていく。
「ちょ、アナタたち押さないでよ」
「狭いって、誰だよ押してるの」
「あ、ちょ…皆重いよっ」
千華が棗に気づくのと
キツネ目達もバランスを崩し、草陰から身を乗り出して隠れていたことがバレたのは
同じタイミングだった。
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作者名:臨楽 | 作成日時:2020年11月6日 0時