【ジン】気味が悪いから囲わないで。【名探偵コナン】

第１９話 ページ21

バーボンはもう分かりやすい。分かり易すぎるのだ、全てが。




笑顔はいつでも仮面のようだし、ポーカーフェイスを決め込んでる。
そんなの、キャラを作っているようにしか思えない。



普段はきっと無愛想な男のはず。笑顔の安売りなんかしないプライドの高い男。






だから私は、彼が苦手なのだ。
初めて出会ったときに言葉にしてしまった『作り笑い、気持ち悪いですね』『貴方は、綺麗な瞳を持っているのね』…。本音と心音が逆になってしまった言葉は、彼を少しでも傷付けただろうか。




結局は彼が苦手なのも、嫌われていると知ってて片思いが嫌なだけだから。
弱いんだ。逃げてるだけ。松田陣平が昨日の昼言っていた言葉だって、図星だったから。だから苛ついてしまった。



情けないなぁと、私に暗い影が落ちる。




貴方達と一緒にいるとね、その澄んだ純粋さが私を苦しめるの。
小さい頃から人を信じず人間の汚い所だけを見て育ってきた私の汚さがとても目立ってしまって。






「……なんて顔してんの、シャキッとしなさい」






暗い妄想だけをしてしまっていた私にスコッチが優しく頭をなでてくれる。


妄想にすぐに入り込んでしまうのは、私の昔からの悪い癖。

最悪の事態しか考えられなくて、目の前を走ってるトラックが実は居眠り運転でこちらへ来たらどうしよう、とか、海に来ていきなり地震が襲ってきて津波に巻き込まれたらどうしよう、とか。案外ファンタジックなおめでたい頭をしていた。




結局それが頭によぎって海や道路は苦手って、馬鹿じゃん。






苦笑してしまった。






『スコッチ、ありがと。
貴方もする？射撃』





そう微笑みかければ、また彼は驚いたような顔をして、静かに「あなたの腕前を見たい」と言った。






『度肝抜かれても知らないよ、パルフェタムールの強さを認知しなさい』






ふふんと自慢げに笑い、準備していたL96AWSを構える。
少し的の中心から上を狙い、カチャリと言う音と共に弾丸が的の真ん中を撃ち抜いた。



続けて左と右、ライとスコッチが使っていた的にも的確に当てる。






ふぅ、とL96を降ろして後ろを振り向くと、バーボンは予想以上にポカーンとしていた。


面白いなぁと思い、意識を呼び覚ますためにガーターベルトに付いていたメスのようなナイフを一本、バーボンの顔すれすれに投げた。



ヒュン、という音が心地よく聞こえる。




「ぅわッ！！っ何するんですか、危ないじゃないですか！！」

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