満員電車、きみの前。 (ページ4)

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どこから電車に乗っているんだろう、と、毎日同じ席を確保している彼を見ていて思う。

どうやらこの電車の始発駅らしい。

めいちゃんに別れを告げて学校に向かう。

朝の電車が苦痛じゃなくなって、なんだか1日の気分も違う気がする。

苦痛じゃないのは、座れるからなのか、それとも彼のコロコロ変わる表情を見るのが楽しいからか。

まだ、わからなかった。

夕方に差し掛かるあたりで授業を終え、
朝とは逆向きの電車に乗る。

朝よりも人の少ない車内は快適で、あたらしいケーキのデザインを考える余裕すらあった。

厚みのあるリングノートにはたくさんのレシピと、ケーキのデザイン案が詰め込まれている。

どれもこれも、わたしの宝物。

今日はバイトがあるので、家の最寄り駅をいくつか通り過ぎる。

ぼんやりと、私の家よりめいちゃんの家のほうが近いなぁ、なんて考える。

カフェのバイトはもう3年目に突入している。

ひっそりとした喫茶店のようなカフェで、
コーヒーや紅茶類、甘いケーキと昔ながらのプリン、
そして喫茶店ならではのナポリタンやサンドイッチを取り扱っている。

少しシックな外装とアンティークを感じさせる店内は、
どこからともなくコーヒーの香りがして、落ち着く。

からん、と音を立てて店内へ入ると、あらき先輩がこちらに振り向いて、おはようと声をかけてくれる。

「学校おつかれさまです、外寒くなかった？」

「ありがとうございます笑
あんまり寒くないです！むしろ春らしい感じであったかいかも」

今日は朝からシフトに入っているらしい先輩は、
普段は大学生で、今日は講義を入れてないらしい。

もちろん彼以外の従業員もいるが、私がシフトを入れている平日の夕方や土日は基本彼と2人だ。

私が出勤するのと交代で、お昼の時間帯のフリーターさんが退勤していった。

店内はあまりお客様も少なくて、
今日はのんびりケーキの試作もできそう。

今日はなるせくんは来るかな、
試作が上手くいったら食べてもらおう。なんて。