満員電車、きみの前。 (ページ3)

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それからというもの、
お互い同じ時間の同じ車両、同じドアから乗るため、
私が乗るとぱっと彼が席を開けてくれるようになった。

彼の名前はめい、と言うらしい。苗字と漢字は知らない。

私が自己紹介した時に、めいってよんで！と食い気味で言われたからだ。

呼び捨てはなんかな、と思った私はめいちゃん、と呼ぶことにした。

「Aさん、おはようございます！」

「めいちゃんおはよう、ありがとうわざわざ」

「いえいえ！」

まんまるでつぶらな瞳とかちりと目が合って、
おもわずどきりとする。

あの日、男性を駅員さんに引き渡して事情を説明してから、彼はこの駅が学校の最寄りなはずなのに、わざわざもう一度電車に乗って私を最寄り駅まで送り届けてくれた。

「いいですかAさん！
これからは～毎日さっきの電車に乗ること！！」

「え、？」

「おれいっつもこの電車なんで、
おれがAさんを守るよ」

「いや、でも…」

「でもじゃないのーー！おれがしたくてやってる事なんだから遠慮しないで欲しいな」

どうしてそこまで、とは聞けなかった。
きっと彼は底なしに優しい人だと思うから。

交換したばかりの連絡先は、すこしずつ履歴を増やしていって。

男性の仲良くなった経験のない私は、なんだかむず痒い日々だった。

背の高い彼は、大人しく座席に座る私を見て満足そうに微笑んだ。

「あれ、なんかメイク変えました？きのうとちがう」

「！そうなの！よく気づいたね？」

「気づきますよそりゃ〜！
昨日のもかわいいけど、今日の方がかわいいですよ」

「あ、、ありがとう、、」

「Aさんってなんの学校行ってるんですか？大学？」
そういえば、というふうに話しかけてくれる彼。

製菓の専門学校だよ、と言えばぱっと目を輝かせる。

「ごはん作れるんですか！？」

「ご飯っていうかスイーツだね笑」

まぁでもご飯も作るよ、一人暮らしだし。

なんだか子供のような表情から目が離せなくなる。

わたしまでワクワクしちゃうような、そんな感じ。