travel 5 ページ9
あれ？こんなの、掛かってたっけ？と。マントの持ち主はわかっているが、何故自分にマントなんかを掛けたのが謎だった。野宿をしているわけでもないのにマントを自分にかけることなんて、今まででなかったと言えば嘘になる。あるにはあるが、戦闘中を除けば、アルが大怪我していたり、自分が熱を出してしまったりなどした時だけで、こんな風に誰も何もなっていない上に宿屋で寝ている時にマントが掛けられているのは初めてだった。
「アル兄…なんか、怪我でも隠してる？」
「ん…ふぁぁ…あれ？ラナちゃん早起きだねぇ」
「あ、ベル兄おはよー」
「あれ、アル君は？」
「顔を洗いに行ったよ。もうすぐ帰ってくるんじゃないの？」
なんてベルとラナが話しているとだるそうにしながらアルが帰ってきた。だが様子がいつもと違う。いつもなら皆がいる部屋に入れば一言や二言言うはずなのだが何も言わず、ラナが寝ていたベッドに腰掛けたのだ。
「アル君？」
「アル兄、勝手にここに座らないでよ！ベッドなら空いてるでしょ！」
「…あ？いいだろ別に…」
ベルやラナが声をかけたり大きめの声で言ったりしたのだが、いつもはそれで口喧嘩になる事が多いが今回はそうではないらしい。不機嫌そうな顔で呟いたあとにそのままパタリ、とベッドの上に寝転がって寝息をたててしまったのだ。
「……アル君がここまで眠いって…昨日寝てなかったのかな？」
「さぁ？私がおきたときはすでにおきあがってたからしらなーい」
「やれやれ、今日は本当に面倒事に巻き込まれそうだ…」
「ん？…朝か…」
ベルが肩をすくめながらそう言ったあたりでリオが目を覚ました。リオはそのまま起き上がって背伸びをするとラナのいるベッドに目を向けた。正確にはラナのベッドにいるアルを見ている。
「おい、そこの飾りは踏んづけていいんだな？」
「フツーに起こしてあげるって選択肢はないの？」
「いいよリオ姉！思いっきり…はさすがにしんじゃうから、軽めにふんずけちゃって！」
苦笑しながらそういうベルは、ラナの言葉を聞いて思う。
―いやいや、踏んづけてる時点で軽めに、じゃないよね…
と。だが、リオは本当にアルを踏んづけるつもりでいるらしく、彼に近づいた。そして、足を振り上げて、お腹あたりを踏んづけた。
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作者名：ユエル＠リノリア | 作者ホームページ：
作成日時：2016年2月14日 15時
