travel 44 ページ48
・・・
あれからアル達は簡単に城の中に入り、今は玄関あたりにいた。と言うのも、城に近づくに連れて貴族街とでもいうのか、そういう類の家が並んだり警察のような人達が歩いていたのだが、皆アル達には道を譲る、彼らを避けると言った具合に、特に何もしなくても城に辿り着けたのだ。もしかしたら、それはリオが縛り上げたパールスワルトを担いでたからかもしれないが。
「こーいうのって、主はアレだよね。謁見の間みたいな所に居るんだよね？というか、この人が主力っぽいんだけど…」
「まぁ…コイツは魔法だけは天才だからな。……あん時村に居なかったんだな、お前」
「へぇ、コイツお前と同じ村の出身か。どーりでお前を知ってる素振りだったわけだ。お前の事をセリスって呼んでたけど。アレ、お前のあだ名だったのか？」
「………」
「アル兄？」
「？…どうした？」
「ふふ、ふ…セリ、スの…由来、は…「黙れ」はっ、隠したって…後で絶対、バレる…のになァ…」
アルはリオの質問に答えようとしたが言葉が詰まって出なかった。いつもと違う様子に心配するリオに、気がついたらしいパールスワルトが言いかけるが即座に遮られる。それも、殺気を含んだ――所謂、ドスの効いた声で。
「ひゃっ…ア、アル兄…？」
その声にラナが怯えて、体を震わせる。だが、目は心配してる目だ。それに気付いたアルは。
「悪い。ベル…ラナを頼んだ。今の俺だと怖がらせる。あと――」
ラナをベルに押し付けるように預けると、最後の最後で言葉を切った。ベルは返事をする間もなくラナを抱える。が、その途端に魔法の気配を感じて咄嗟にパールスワルトの方を見た。すると。
ドゴッ！
アルがハンマーで地面を叩いた。その衝撃で城の石造りの床が見事に凹んだ。範囲は広くないものの、穴の深さは結構深めである。その事にその場にいた全員が驚く。特に、パールスワルトは震え上がっていた。過剰と言っても良いほどに。
「てめぇ、この期に及んでまだ逃げ出そうとするか？そんなにコレが食らいたいんだな？」
「ひっ…！い、いや！ち、ち、違う！」
「……っと、いけない。ダメだな、加減が効かない」
アルはそう呟くが、誰もその意味を理解できなかった。普通に力加減が効かなかった、という訳ではないのは彼の顔を見ればわかるからだ。
―何かおかしい。なんだ、この男が現れてから何か様子が……何か“抑えてる”？
リオはただ、直感でそう思った。
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作者名：ユエル＠リノリア | 作者ホームページ：
作成日時：2016年2月14日 15時
