travel 40 ページ44
その男は、少し長身で細身。格好としては、黒いロングコートにズボン、靴と言ったものだったが何処と無く魔術師を思わせる雰囲気だった。実際、その男は自身の足で立っているのではなく、少し浮いていることから浮遊系の魔法を使っているらしかった。
「おやおや、気の強いお嬢さんだな。というか、そこの青髪君は…どこかで見たことある気がするんだけど、そこらへんどう？」
「ボク？んー…どうだろうね」
「へぇ…まぁいいけど。取り敢えず青髪君は、俺と来てもらうぜ？いい�燹宗宗臭瓩世�らな」
「は？今、なんて言った？」
「はぁ…まぁイイけど、ボク以外の人には手は出さないで欲しいな」
なんて言うアルは目を開けてはいた。その目に、光があるかどうかは別として。相手の男を見たいが視界が霞んでよく見えない。そうこうしてるうちに、男が言った。
「……変わったなぁ？『セリス』？」
「―――！」
その言葉を聞いた途端、アルは目を見開いた。リオにはそれが見えてはなかったようだが、身体がビクついた事でバッチリと只事ではないとは悟られてしまった。ベルは既に男が出てきた時点で危ないことはわかっていたらしく、ラナを抱える手に力が入っている。それに加えてステッキを持つ手にも力が入っている所を見ると、この男の撃退も考えているようだ。
「…セリス？こいつはアルであってセリスという名前ではなかったはずだが？」
「ふはははは！まだ明かしてないのか！成る程、そりゃお連れさんも知らねぇわな」
「あはは…人の事を本人の許可なく勝手にベラベラ話すのはどうかと思うんだけど？ねぇ、パールスワルト？」
「なっ！貴様俺の名を勝手に言うんじゃねぇよ！アルネス！」
そう、男――パールスワルトは言ったが、アルが
「俺はそんな名前じゃねぇよ、俺はアルって呼んでくれと言ったがそんな名前で呼んでくれ、とは言ってねぇぞ、パール」
と、本来の口調で言った事から少し怖気づいたようだ。その証拠に目を見開いたのと、少し後ろに下がったからだ。
「で、君はアル君を何処に連れて行くのかな？返答次第じゃ、君をボコボコにしなきゃならないんだけど？」
それを好機と見たのか、ベルがいつかの時と同じく、黒い雰囲気のままにっこりと笑って言った。
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作者名：ユエル＠リノリア | 作者ホームページ：
作成日時：2016年2月14日 15時
