travel 36 ページ40
「そう見えるなら俺のポーカーフェイスも捨てたもんじゃねぇな」
そう言って、ニヤリとした笑みは崩さないままだ。どうにもその態度がナメられていると思ったのだろう。リオは一度距離を取って、右手を不自然な位置で止めた。その素振りから、アルは彼女が大剣を出すと予想がついた。
「その態度も、今にできなくしてやる…!!」
「おいおい、「ソレ」は奥の手だろーが。俺相手なんかに出しちまっていいのか？」
「よくなければ…出していない!!!」
そう言ってリオは右腕を横に振る。すると、一瞬で彼女の背丈と等身大だろう大きさの大剣が現れる。そしてそこまで大きいとなればかなり重量のあるはずだが、彼女はそれを感じさせない動きでアルに突っ込んでいく。流石にこれはマズイと思った彼だったが予想以上に彼女が素早く、気がつけば眼前にリオの姿があった。
「味わえ、あたしの一撃を!!!」
「っ…！」
アルは咄嗟に“右腕”でその大剣の一撃を防いだ。その瞬間、耳鳴りが残る程の金属音と、少し遅れてバキン！という何かが割れた音がする。そして更に少し遅れてトサ…と割れたモノが地面に落ちる音もした。リオは金属音のために少しふらつきながらも決して彼から目を離さず見ていた。すると。地面に落ちていた、彼のつけていたのであろう腕輪の破片が光り、それを見た彼が左腕を中途半端な位置で手を開いて止まる。
その仕草から、リオは理解した。彼の言っていた“武器”が現れようとしていることが。
そして、光りが治まる頃にアルの左手には長柄のハンマーが握られていた。彼の持つハンマーもまた、リオの持つ大剣と同じくらいの等身大の武器だったのだ。しかし、それはよく見ると違った。等身大ではない。上の…ハンマーの部分がアルの頭よりも少し高い所にある事がわかる。そして武器を持った彼ごと全体を見たリオは何故か手足が震え、今の自分ではまともに剣を振るえないだろうと思った。きっと恐怖しているのだ、眼の前の彼に。
「……ぁ」
「ハハッ！これで、フェアってか」
「っ」
アルの言葉に、何かを返そうとしても喉がピタリとくっついてしまったかのように、声が出せない。出たのは、辛うじて「ぁ」と聞き取れるような、小さな、小さな、声。
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作者名：ユエル＠リノリア | 作者ホームページ：
作成日時：2016年2月14日 15時
