travel 16 ページ20
・・・
朝日が差し込む時間。だが、ここは森の中。そのせいで少し薄暗い。そんな中、もぞもぞと動く影が1つ。
「ん…あれ……まだ、だれもおきてないの？」
「スー…スー…」
「………」
「ふあぁあ……ったく、早起きな嬢ちゃんだな」
「!…アル兄！起きてたの!?」
「ちげーよ。今起きたんだよ。嬢ちゃんの声は高いからな」
「……ねぇ」
「ん？」
アルはラナがいきなり真剣な声で話しかけてきたため、真面目に応じる。流石にここで空気を読まずにはぐらかしたり、話をそらすような事をしたら彼女は怒るだろう。それにまずこんな時にそんな事をすれば、彼女は自分の気持ちを表に出すことなくまた胸の奥にしまいこみかねない。
「その、聞いちゃいけない…のは、わかってる。アル兄は皆に隠してるから」
「それで？ボクの何を聞きたいの？ボク、こう見えて隠し事はたくさんあるんだ。何について知りたいか言ってくれなきゃ答えようがないよ？」
アルは勤めて明るく、そして優しく語りかける。なるべく、目の前に居る幼い少女が怖がらないように。こう見えて、この少女は強がりなだけで、本当は優しくて、何事にも一生懸命で。何より、泣き虫なのだ。天才と呼ばれていても中身はまだたった5歳の幼い少女。まだ、母親や父親に甘えていていい、子供なのだ。
「アル兄のその…頭痛いのは、なにか…病気なの？」
「…病気じゃねぇよ」
「じゃあ何なの？」
「それは教えられない」
「なんで!?」
「何ででもだ」
アルはいきなり自身の頭痛の事を言われるとは思っていなかったため、返答に困った。ここで真実を言っても理解はできるかもしれない。だが、気持ちの方がついて行かないだろう。誰がいきなり「自分にはとあるチカラが封印してあって、それが頭痛の原因だ」なんて言われて「そうですか、それは大変ですね」と返せるだろうか？誰だって理解はできたとしても混乱するはずだ。
「私が…子供だから？」
「それもあるな。でも、これはボクの……俺の問題だ。誰にだって話す気はねぇ」
「！」
「ほら、わかったらさっさと寝ろ」
やはり、最終的には突き放すような事を言ってしまうアル。だが、本意ではないのは確かなのだ。アルは何故自身にチカラが宿ってしまったのか分からないのだ。その上、このチカラはとても危険なもので封印をといてしまえばどうなるかわからない。それだけ危険なモノなのだ。
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作者名：ユエル＠リノリア | 作者ホームページ：
作成日時：2016年2月14日 15時
