膜 ページ28
鯨の中は海の中みたいだ。
どこに進めばいいか分からないがとりあえず進み続けると、目の前に大きな膜で覆われたAが居た。
「これは、膜だね」
「見たらわかる」
「多分これがAちゃんの作り出した本当の壁だ」
「……」
膜に触れるととても柔らかい、なのに中には入れない。
中也は中で耳を塞いで座り込んでいるAを見つめる。
「A……俺の声、聞こえるか?」
返事はない。
「……俺はお前に甘えちまってたんだ。組織のことを、俺の立場を理解しているからお前はきっと何も言わないと、俺のことを嫌わずにそばに居てくれると。お前に甘えてお前に辛い思いをさせちまった。おれは、もう二度とお前を傷つけない、今回みたいな任務はもうしない。たとえそれで幹部から降ろされても、俺は受けない。お前が初めてなんだ、俺の今までの人生の中で何よりも優先したいと思ったのが、護りたいと思ったのが。頼む、A、俺にもう一度お前の傍に居れられるチャンスをくれ…」
中也の悲しそうな声が静かな海の中に響く。
耳を閉じていたAがゆっくりと中也を見る。
涙を流し眉を寄せ、いつも口角が上がってるはずの口は下がっていて、痛々しかった。
触れていた膜が少し薄くなった。
「A…」
『……私はまだ子供だから…きっと中也さんに沢山迷惑かけちゃう…』
「お前の迷惑なんて可愛いもんだ」
『…もう、女の人とデートしないで…』
「あぁ」
『家にも…入れないでね…』
「お前以外の女の匂いなんて残したくねぇしな」
『中也さん…』
「あぁ」
『………嫌いに、ならないでっ』
「…なるかよ、馬鹿野郎」
パァンっと膜が消し飛びAは中也に抱きついた。
離れないように強く強く抱きしめる。
お互いの距離をゼロにするために強く。
「悪かった…」
『ううん、もう、いいよ』
「家に帰ったらお前の言うこと聞く」
『えー…ふふ、なら今日1日ずっと抱きしめててほしいな』
「お易い御用だ」
微笑ましい2人に太宰は目を伏せ微笑む。
好きだった彼と仲のいい彼女の微笑ましい光景に太宰は少しさみしさを感じた。
あんなふうに自分も自分よりも愛おしい人が出来るのだろうか。
『できるよ』
「……なんでわかったのかな?」
『ここは私の中でもあるもん』
「……そうか」
「何の話だよ」
『「秘密ー」』
「…」
『拗ねてる?』
「拗ねてるねー」
「うるせぇよ!」
「……さて、帰ろうか」
「…おう」
『はい!』
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桜庭暁(プロフ) - まさかの給料三ヶ月分で笑っちゃいましたwこのお話好きです! (2018年6月27日 17時) (レス) id: ab5fb01835 (このIDを非表示/違反報告)
双葉亭 - 太宰さん面白くて好きです! 更新頑張ってもらえたら嬉しいです。 応援してます。 (2018年5月25日 20時) (レス) id: 4feb0da943 (このIDを非表示/違反報告)
yagiri(プロフ) - はらさん» コメントありがとうございます!!外すのを忘れていました!!ありがとうございます! (2018年5月23日 8時) (レス) id: f9a4450aaf (このIDを非表示/違反報告)
はら - オリジナルフラグをちゃんと外して下さい。違反行為なので更新前にちゃんと確認して下さい (2018年5月23日 6時) (レス) id: d628b1ec4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yagiri | 作成日時:2018年5月23日 6時