猫の墓鵐 ページ20
僕「鬼椿、なにやってんだよっ!」
『おやおや、酷い言われようだねぇ。』
やれやれ、と鬼椿は肩をすくめた。
体育館の裏で僕は鬼椿と話をしていた。肩をすくめたいのはこっちだ、と僕は内心思った。
『…夏椿君、その左手…』
鬼椿は、僕の左手を見て珍しく驚いたような顔をした。
『一つ聞いておくよ?誰に、やられた?』
僕「…別に、ちょっと紙で切っただけだ。」
何に、ではなく誰に。
鬼椿はあらかた分かっているはずなのに、僕は彼に嘘をついた。鬼椿が、何故か笑った気がした。
『まぁ、俺は君がどうなるか知ったこっちゃないけれどね、そうやすやす助手を失うのは惜しい。』
鬼椿は、僕に近づくと肩に手を置き去り際に一言残した。
“幽霊は何も人間だけじゃないんだよ。”
その言葉に僕は背筋が凍った。
嫌な汗が首筋を伝い、ワイシャツの中に入り込む。
気分が悪い。頭をまるで鈍器のようなもので殴られたような、衝撃だった。
僕「絵里香…お前に一体何が…っ!!」
× × × ×
『…。』
鬼椿は、木元と書かれたプレートがある玄関に立っていた。
黒い日傘を閉じ、グラサンを片付け、マスクをとった。
そして、チャイムを鳴らした。
暫くして玄関が開いて、一人の女性が出てきた。
「どちら様ですか?」
『初めまして、
にっこり、営業スマイルで鬼椿はそう告げた。
「絵里香の…ことですか?」
『はい。実は僕、絵里香さんの彼氏なんです。』
笑顔で言ってのけた鬼椿に女性は驚いた顔をして、家の中に鬼椿をいれた。
「そうだったの!?こんな恰好いい子と付き合えて、あの子は幸せ者ねぇ!今、部屋に閉じこもってるの。一言言ってくれる?」
『はい、勿論ですよ。』
絵里香の母親と名乗った女性の後ろに、並び鬼椿は階段を上がり、部屋の前に来た。
『あ、あの…申し上げにくいのですが、彼女と二人きりにさせてくださいませんか?』
にっこり、と微笑めば母親は「気がきかなくてごめんなさい!」と告げ、下に降りていった。
そうして、鬼椿はおもむろに彼女の部屋のドアノブを回した。
『邪魔するよ。』
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作者名:ありすとてれす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/gen.php/novel/
作成日時:2014年6月20日 20時