醜い天使【HP】 (ページ21)

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Aは結局、2人から隠れるようにしてサンドイッチを食べた。
2人も敢えて見ないようにした。

*****

「そろそろ制服に着替えなくちゃな」
フレッドが通路側の小窓から他のコンパートメントを覗いてそう言う。そうだね、と返したAが自分の服のボタンに手をかけ始めると、双子は焦りながらも期待の眼差しで、
「駄目だろ、俺たちのいるところで着替えちゃ〜」とか
「そうそう、俺らだって男だからなぁ」なんて言いながらニヤついていたけれど、Aは既に下に制服を着込んでいたので双子の期待は虚しくも消えていった。

間もなく、汽車が大きく蒸気を吐き出す音と共にゆっくりと止まった。
ホグワーツに着いたのだ。
3人はこれから始まろうとしている自分達のスクールライフに思いを馳せ、瞳を輝かせた。

汽車を降りると、
「イッチ年生はこっち！イッチ年生はこっちだ！」と、分厚い毛皮のコートを着た人当たりの良さそうな大男が叫びながら新入生を誘導している。
どうやらホグワーク城まではボートに乗って行くらしい。
Aがはぐれないように、と、いつの間にか2人に繋がれて塞がった両手が、ぐんぐん前方に引っ張られる。

「A、乗るぞ！」何の予兆もなく発せられた声に戸惑っているうちに、また両手が引っ張られる。

気づけば体は宙に浮いていた。_______落ちる…。
状況を把握できないまま、それでも数秒後に訪れるであろう水の衝撃を想像し、Aは目を閉じた。

が、落ちるなんてことはなく、代わりに既にボートに乗っている2人の間に収まった。
驚いているAを、両側から同じような悪戯な笑みが見つめる。

ボートはひとりでに動き始めた。

______2人といると楽しいな。
出会ってからの日は短いのに、Aにとって、両親と過ごした色のなく憂鬱な10年間をも忘れてしまいそうになるほど、2人と過ごす時間は新鮮であざやかなものであった。

自分の顔の半分以上を覆う黒いレースに触れる。
いつか、2人になら、これがない僕でも受け入れてもらえるかな…。
ふと浮かんできた考えに、激しく首を振る。
2人だって、“彼”と同じ事を言うかも知れない。僕は2人の全てを知ってる訳じゃない、と。
本当は信じたいのに、信じられない自分が酷く情けなくて、そんな自分を感じて悲しくなった。

※誤解を招いてしまっているかもしれないので説明します。Aちゃんのレースは、占い師さんとかがつけてそうなあの長い布っぽいのをイメージして書いております…。