醜い天使【HP】 (ページ18)

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腕の力で体を持ち上げるなんて出来なかったし、腹筋はほぼ皆無に近かった。
窓の縁に手をかけてうんうん唸るAを見かねて窓から身を乗り出したフレッドは、Aを抱きしめた。

「えっ」

そのままAを持ち上げて、コンパートメントの中に収まる。
ジョージはフレッドのことを睨みつけていたが、Aは顔を赤くして俯いていた。
父親に抱きしめられたことなどなかったから、人生で初めて男性に抱きしめられ、嬉しさとあたたかさを知って感動していたからだ。

双子からは彼女が照れているようにしか見えていなかった。

「なぁにAちゃん、もしかして照れちゃった？」頬杖をつきながらAを見つめるフレッド。
「俺抜きでお楽しみか？」ジョージの不貞腐れた声。
「いや、別に照れてるとかそういうわけじゃなくて、その、今まで男の人に抱きしめられたことなんてなかったから、なんか、感動してた。」興奮気味に語るAを、双子は不思議そうに見る。

「え、一回も？」
「うん。」
「父さんは？」
「ない。」

「じゃあ俺はAの初めてってわけか。」
自慢げに横目でジョージに視線を送るフレッド。
ジョージは絶望と怒りの眼差しを送り返す。喧嘩が始まりそうな空気だった。

Aはフレッドの隣からジョージの隣に移り、

「ジョージも僕とぎゅーしたいのかな？」と聞いた。

一見Aが天然かの様に感じるが、完全に悪意のある…そう、まるで双子がAに向けるようなニヤついた顔をしていたのだ。

「ねーえ、どうなんだよー」

口元はレースで隠れて見えないが、楽しそうに光るブルーの瞳からは容易に想像がつく。

「したいっ！」
「待って、ジョージ可愛い！可愛いよー！」

はい、ぎゅ〜、とAはジョージを抱きしめる。

「えへへ〜、あったかいなぁ。本当に僕なんかでよかったの？今世紀最悪のブスだよ？」
「破壊力…。見ろよ相棒。俺は初めてAからハグしてもらった男だ。Aは可愛いから大丈夫だぞ〜。可愛い、可愛い。」

だらしなく頬を緩ませる相棒に、今度はフレッドが冷たい羨みの視線を向ける。

そんなふうにいちゃついていると、列車が動き出した。