今世 ページ47
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『 なんだかなあ……こんなつもりじゃなかったんだけど…まさか李以外に執着心が芽ばえるような存在に出会うなんて……やっぱり幼子に弱いのかな……李と出会ったのも生まれたばかりだったし……それとも今の私が完成体じゃないからなのかなあ……厄介なものだね、本当に』
「 お、おいA? 」
ブツブツと不貞腐れた様に、しゃがんで俺の首元で喋るA。
少しくすぐったい。
『 今世の呪術師はあんな化け物ばっかりなの?……それに宿儺にも一発お見舞いしてあげないとだしね………………恵 』
「 ……な、なに」
後ろを振り向けば今までに無いくらいの至近距離にAの顔。
頬に影を落とす長い睫毛に、薄くバランスのとれた桜色の唇。それとお風呂の時に感じた酔う様な甘い香りが鼻腔を満たす。
『 恵は大切な物を失くしちゃった時、その物をいつまでも覚えて大切に記憶しておきたい?それとも眼前にないのならって大切な物の記憶を忘れちゃいたい?』
さあ、どっち?
と急に始まったクイズのような二択。そもそもこれをクイズって言っていいのかすらわかんないけどな。
「 そもそも幼稚園児にする様な二択じゃないだろ……」
さっきから、急に好きと言ったり珍しく情緒不安定気味になっているA。
「……俺の性格的に、それがほんとに大切ならずっと頭から離れない、はず……だから忘れたいかもしれない…………でも本当に大切なら、忘れたいなんて思わない…と、思う……よくわかんないな 」
もう1回言うけど俺まだ幼稚園児だぞ?
『……そっか 』
少し悩んだあと決心したように頷くA。
「?もう、寝ようA」
ボーっとしているAの腕を引っ張って同じ布団に入る。
今日こそはAの後に寝て寝顔を見てやろうと意気込んだが気づいた時には微睡みに身体が沈んでいた___
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物音がして目を覚ます。
「ん……なんだ?……李さん?」
「 ……すまんな、恵。’’
初めて名前を呼んでくれた事に込み上げる嬉しさと、暗い部屋の中揺れる2つの火の玉に困惑する。
「???……………A」
良くない気がした。
嫌な予感がした。
ガチャと古びたドアが開く音がして、動かない体を這いずって廊下に出る。
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武藤で無糖(プロフ) - みくさん» ヒョエーーー!そう思って頂けて嬉しい限りです。コメント凄いモチベになります!ありがとうございます߹ᯅ߹ (2022年11月8日 14時) (レス) @page28 id: 6b6a37760c (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - ヤバい...物語の進み方が好きすぎる...設定が好き....面白すぎます!夢主ちゃんのこういう感じ、めっちゃ好きです!! (2022年11月7日 20時) (レス) @page7 id: c22457a4d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:武藤で無糖 | 作成日時:2022年10月23日 15時