寂しがりやに欲しがりや【櫻井百瀬】 (ページ6)

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君の好物ページ6

スケート場から出て空を見ると橙色が紫がかっていた。
綺麗だけど"もうすぐだよ"って告げられているようで寂しさもある。まぁとりあえず門限ギリギリまでは君と一緒にいるつもりだけど。

だって折角会えたんだからギリギリまで一秒も長く一緒にいたいじゃない？
今この時だけ一秒が一時間の長さになって、寂しいと思う時間は一時間が一秒の短さになってしまえばいいのに。

「もう暗くなってきてるね～。ご飯一緒に食べよっか。なんか食べたいものとかある？」
「食べたいもの…って前回は私がリクエストしましたし今度はモモくんが食べたいもの、じゃないですか？」
「え～そう？俺、君が今食べたい物ならなんでも食べられちゃうよ？例えそれが嫌いなものであっても」
「…それは私も同じなので、今日はモモくんが決めて下さいね？私が今食べたいものはモモくんが食べたいものだから」

はみかみながら笑う彼女は随分な確信犯だった。
これは一本取られた俺の負けだね。最近の彼女は殺し文句が多すぎて心臓がいくつあっても足りないとか思えちゃうくらいだ。

俺のためにそんなスキルを身につけてくれるのは嬉しいけれど彼女は彼女のままでいて欲しいと思ってしまう。
そんな俺でもきっと君は許してくれるんだろうな。

「本当、今日は君にドキドキされっぱなしで困っちゃうな」
「…それは私のセリフなんですけど」
「ふふ、そう思ってくれて嬉しいよ。じゃあ行こっか。俺の好物、知ってるでしょ？」

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「モモくんがラーメン好きなのってやっぱり今でも意外性を感じるんですよね…」

彼女はもらったお冷を手に考えるようにそう言った。この子とこの店に来る回数は結構あるのに未だに俺の意外性に不思議さを感じているらしい。

放課後に男女が二人でラーメン食べたりするのってなんか高校生カップルって感じがしていいよね～。

「まぁ、でもこういうのって意外性があった方がグッとくるでしょ？」
「あ～、なんていうか大人っぽいモモくんの好物がラーメンってだけで年頃の男子高校生なんだ～って可愛さを感じたりするのはあります！」
「ふふ、俺もたまに君がちょっと大胆だったりするとギャップに殺されそうになるよ？」
「だいたっ…！？い、いつ私が大胆になったって言うんですか！？」

黒目がキョロキョロ彷徨って顔は真っ赤だし瞬きの回数だって多くなってる。
そんな彼女がおもしろかわいくて思わず笑ってしまう。

今は楽しくて仕方ないけど終わったらまた会いたい欲が増すんだろうな。
君もそんなことを思ってくれてたらちょっとはマシになりそう、なんてね。