Repeat not end. 【千】 (ページ5)

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悲劇、というものを身をもって実感した瞬間だった。

歓声が悲鳴に変わって事態を理解したのには結構な時間がかかった。放置された思考、スタッフに誘導されるがままただ体だけが動く。
会場の中、最後に私の耳にしっかりと届いたのはユキさんの取り乱した、バンさんを呼ぶ声だった。

「やだ...っ...な、んでっ... 」

この事態を、悲劇を私の脳はやっとのことで理解したらしい。気づけば会場の外にいて。周りの目なんて気にせず泣き崩れた。
やだ、なんて言ったって私たちは祈るしかない。たったそれしか出来ないのだ。医者だって神ではない、確実に治せるという保証はどこにもないのだ。
手が氷のように冷たくなる。さっきまで熱気に満ちていたというのに。

願うように手を握る。目を背けながらも、信じたくなくても、私はただバンさんの安全を願うしかないんだから。

「 (バンさんが安全でありますように。きっとまた、ふたりが歌って踊っている姿を見られますように...) 」

天に届くように上に向かって、だけど静かに心の中で呟く。冷たい風が頬にかする。私の祈りは届いたのだろうか、それとも冷たい風に呆気なく吹かれでどこかに消えてしまったのだろうか。
ユキさんの焦った表情が頭の中に残る。あんな悲しげな顔なんて、見たくなくて、心に穴がポッカリと空いてしまったようにさみしい感覚がして再び涙が溢れ出した。

暫くして、最初はショックで仕事先でのミスも多かったがだいぶ落ち着いたのだろう。前と同じでしっかり対応できるように戻ってきた。
だけど決して私の中にRe:valeが消えることはなくてずっと情報を待っていた。そしてそれが来た日の夜、私は枕を濡らした。

バンさんは生きていた。だけどその後行方不明になったらしくRe:valeは事実上の解散だったんだ。

夢だと信じた。夢であって欲しくて頬を何度もつねった。だけど夢ではなく現実だった。ふたりの姿をもうあのステージで見れないと考えただけで涙は溢れ続けて1時間も2時間もずっと泣いていた。