Repeat not end. 【千】 (ページ1)

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涙で目を真っ赤に腫らした次の日、心に染み込んだ悲しさ寂しさが一気に波に攫われて、彼らの世界に引き込まれた。
それは一瞬の出来事のようで、間抜けに開いた唇からは言葉も何も出ずただただ私は泣いていた。

前日の夜。月は雲に隠され降りしきる雨の中私は傘など持たずに自宅へと向かっていた。頬に流れるのは雨か涙か。私にはわからない。

「さいっっあく...あんな男もう知らない！」

先程彼氏だった男の浮気現場を目撃し私は別れを告げた。最後に持っていた傘を男に投げつけて...。
浮気してるだけならまだ許せた。だがあの男、全く反省の色が見えずに寧ろ彼女である私を罵倒したのだ。...思い出したくもない、殺さなかっただけでも感謝してほしいくらいである。
そしてなにより、あんな男に惚れ込んで、信じていた自分が馬鹿で情けなくて嫌いになった。初めて出来た恋人で嬉しくて恥ずかしいくらいに彼が好きだった。騙されている、なんて知らずに。
濡れた髪を耳にかける。ようやく家の前だ、このまますぐシャワーを浴びれば風邪をひくこともないだろうと思い鍵を開けた。

「ちょっとはさっぱりした...かも」

シャンプーの香りに包まれた髪をふんわりとしたタオルで吹く。洗面所の鏡に映る自分は目も鼻も腫れていて酷い面をしていた。こんな可愛げのない女、ふる方が当然なのだろうか。
でも、だって、あの時言ったじゃないか。大好きだよ、愛してる、って。私以外誰もいないのに言葉が私の耳に直接入り込んでくる。頭が痛い、耳が痛い、心がナイフでグサリと刺されているみたいだ。
涙が再び吹き出そうになったその時、私のスマホが私を呼んだ。手を伸ばして取ってみると、友達からの電話だった。

「もしもし... 」
「もしもしA？って何その声、なんかあったの？」
「っぐ...彼氏に...ふられたっ... 」

彼女は私の話を静かに最後まで聞いてくれた。誰かに話すと少しは軽くなる、って本当なんだなぁ、としみじみと感じてしまう。

「最悪だね、別れて正解だよ」
「だよね～！くぅぅ...悔しい... 」
「まぁまぁ、次はもっといい男見つけなよ。そうだ、気晴らしにさ明日ライブ行かない？」
「ライブ...?アイドルかなんかの？」
「そう！Re:valeって言うんだけどね、もうその二人組がちょーかっこよくて... 」

それから彼女から彼らの魅力について長々と語られてそこまで興味があったわけでもないけど折角だし行ってみることにした。
それが私の人生を大きく変えるだなんて、今の私は知る余地もないのだ。