22:外れた名推理 ページ22
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翌朝のテレビは、漸く神奈川で梅雨が明けた事を知らせていた。
同時に初夏の到来で日中は30度にも昇る為水分補給はこまめに取るように、キャスターが淡々と告げていた。
一昨日が最後の雨だったのかな。
家を出ると、体いっぱいに木々の新緑の爽やかな匂いと、まだ熱しきらない爽やかさの残る夏の風が入り込む。
夏の到来。私の一番大好きな季節。
「おはよう潔くん、昨日はありがとお」
「おはよ、俺なんかしたっけ?」
「あーAちょっと待って!」
「よっちゃんおはよ、…え何?」
「ちょっと作戦会議中だから」
登校してすぐ、廊下側の席に座る潔くんを見つけて駆け寄る。
きょとんとした顔でシャーペンを置いた彼の元に、いち早く友達が寄ってきて慌ただしく潔くんに耳打ちしていた。
苦笑いした潔くんが私を見て何とも形容しがたい顔を向ける。
何だか、今からなんて言おうか迷ってる、とでもいいたげだ。
「ええと、差し入れ。どうだった?」
「めっちゃ嬉しかった! 多すぎだけどね。
でも私の好きなのばっかりだった」
「あ、そうか! そりゃ良かった。
ちなみに俺何買ってたっけ?」
「あはは、買いすぎて忘れちゃったの?
アイスでしょ、フルーツもあったし、あとプリンも」
「ふは、買いすぎだろあいつ」
「こら潔っ」
「あいつ?」
「いやっ、あいつって、昨日の俺な!」
ぽんぽんと交わされる会話の中、突然潔くんが吹き出して、その口元をよっちゃんが抑えた。
何か誤魔化すように二人は同じ顔して笑った。
怪しすぎる。……じっと睨んで双方違う方向にぷいっと顔を背けられてしまった。
「…二人とも、一体何を隠してるの?」
「まーまーそんな事より、1限体育だから急がないと!」
「そうだった! 俺ら、今日サッカーやるから見ててくれよ!」
「やばっ早く着替えないとだ」
潔くんが逃げるように手提げから体操服を取り出して、「じゃ後でな!」なんて教室を他の男子と一緒に飛び出していった。
それから少し遅れてよっちゃんを筆頭にいつもの友達が私の手を引いて教室を出る。
相変わらず彼女は私の隣でぎこちなそうに微笑んでいる。
「よっちゃん……もしかして」
「、えっ……」
「潔くんと付き合ってる事、隠してるんでしょ」
「…………はあ、」
渾身の推理で至極真面目に問いただしたつもりなのに、強張った顔した友はその言葉の直後、突然気が抜けたように笑った。
……え、違うの?
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時