16:選ばれた氷菓子 ページ16
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「私は奢る気満々でいたのに!」
「こんなもんで俺のお礼になったんなら、随分安く見られたもんだな」
「おいしいご飯奢らせていただきます」
「ん。誘えよ」
ドリンクを待っている間、そんな会話のやり取りをする。
カウンターで頬杖をつきながら凛くんは私の方に顔を傾けた。
そんな普段見ない優しい顔で微笑まれると、どう返せばいいのかわからなくなる。
「お待たせしました」
「ありがとうございます、凛くんどっち?」
「どっちでもいい」
「え? どっちでもいいって」
「お前が好きな方選べ」
興味なさそうに私を見つめる彼に困惑が隠せなかった。
もしかして、凛くんも新作に弱いクチか?
対して疑問を問わず、私は凛くんにチョコを渡した。
「んんっおいひい!」
「…あっそ」
毎回、月の新作ドリンクは一番を更新する。
感動の共有に凛くんを見ると、ストローをくわえながら彼は優しく目を細めた。
また意図せずときめきを供給されて、まじまじと凛くんの顔に見入ってしまった。
すると見つめ返してきた凛くんが、ストローから口を離して私に差し出す。
「こっち飲むか?」
「えっっでも」
「物欲しそうな顔してんだろうが」
ストローの先が唇に触れた。
だってこれは、間接…、
もうどうにでもなれの気持ちで啜った。
ふんわり苦いチョコチップがざくざくしている。
「めっちゃ美味しい……こっちの方が好きかも」
「交換するか」
「いいの? でも私結構飲んじゃった、」
私が言いきる前に、右手に持っていた私の桃は凛くんによって掬い取られてしまった。
さっきまで飲んでいた同じストローに口をつける。
ごつごつの喉仏が2度上下して、不服そうに彼は顔を歪ませた。
「……あっっま」
「え、凛くん甘いの苦手なの?」
「苦手じゃねえけど、よくこんな甘いもん飲めんな」
凛くんはその後ほとんど私が飲むのをずっと眺めていた。
甘いもの好きじゃないのに、私が迷ってるのに気づいて2つ選ばせてくれたんだ。
この間から見え隠れする凛くんの不器用な優しさに私は愛おしさで目が熱くなった。
「……凛くん、ありがと」
「何だ今更」
「優しいな、って思って」
家のすぐ近くの曲がり角で、凛くんは立ち止まった。
私を見下ろす瞳は感情が読み取れない。
彼は暫く黙り込んで、ゆっくりと私の背に合わせて腰を折った。
「何でお前に優しいか、そろそろ分かってきたか」
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時