【鬼滅の刃】ちゃんと聴かせて (ページ10)

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「この方は大丈夫ですよ。ご主人は、気の毒ですが拘束して地下牢に…」

「………」

炭治郎はそれを聞いて安堵するものの、何か言い難そうな様子で口を開く。

「人の怪我の手当をして…辛くないですか…？…っう"」

すかさず炭治郎の横腹に一撃を食らわした青年は、不快そうに眉を釣り上げる。

「鬼の俺たちが、血肉の臭いに涎を垂らして耐えながら、人間の治療をしているとでも？…」

「ごめん……」

「…………」

炭治郎は善人がするそれのように、自らが傷付いたような表情をして見せた。

梢は、彼が本当の善人であると言う事は分かっていた。
しかし、不思議だった。

何故彼はまるで自らが傷心したような顔をしたのか。

それはきっと彼の本心が滲み出したものだろう。だが彼は当事者ではない。
傷付く理由も、必要性も無いはずだ。

そんな事を考え込んでいると、「よしなさい。何故暴力を振るうの」と、女性は芯の通った声で青年を叱る。

彼はきまり悪そうに黙って俯いた。

「名乗っていませんでしたね。私は珠世と申します。その子は愈史郎、仲良くしてやって下さいね。」

炭治郎は無言で威嚇する愈史郎をチラリと見て、これは無理があるな、と心の内で即答した。