15.鼓の屋敷 ページ44
長い長い畦道を抜け、向かった先は山の中だった。
鬱蒼と木々が生い茂る山は、昼の筈だが夜のように暗かった。
鬼が潜むには最適な場所であろう。
善逸が歩きながら弱音を吐いているうちに、少し開けた場所へ着く。
木々の奥にひっそりと立っていたのは、大きな屋敷だった。
ただそれは、普通の屋敷のそれとは違った。
三人は屋敷の手前で足を止める。
「血の匂いがする…でも、この匂いは…?」
「えっ何か匂いする?」
炭治郎の鼻は、血に混じった不可思議な匂いを捉えていた。それも、彼も今まで嗅いだ事の無い匂いだ。
善逸には匂いなんて何も感じられなかったので、それを不思議に思いつつ、耳に手を充てがう。
「それより、何か音がしないか?あとやっぱ、俺たち共同で仕事するのかな?」
「音…?」
今度は炭治郎が首を傾げた。彼にはやはり音なんて聞こえてなかったからだ。
片や梢は何か視線を感じ、その元を辿った先で、あっと声を漏らした。
炭治郎や善逸もつられて、梢と同じ方向を向く。
「こ、子どもだ…」
善逸は鬼に対する恐怖からか少しの物音や挙動にも敏感になって、鬼が昼間の外に居る訳無いのに、吃驚したと言わんばかりにガタガタと震える。
木の影から屋敷の様子を窺うように立っていた二人の子ども。
顔立ちが似ているから、恐らく兄妹だろう。
此方に気付いたようで、警戒して体を震わせていた。どちらも齢十にも満たず、顔には恐れのニ文字が浮かび上がっている。
炭治郎は真っ先に二人の元へ歩み寄る。
そしてその怯えた様子を見て、話を聞けるような状態では無いと察した。
「よーし!じゃあ兄ちゃんがいい物を見せてあげよう。」
炭治郎は大袈裟な位明るく優しい声でそう言いながら、怖がらせないように膝を着いて子どもと目線を合わせる。
「じゃじゃーん!手乗り雀だ!な?可愛いだろう?」
ピョンピョンと飛び跳ねる善逸の鎹鴉…雀は可愛らしく、子ども二人を酷く安心させた。
寄り添って立っていた二人は急に足腰の力が抜けて、へたりと座り込んだ。
炭治郎は彼らに漸く尋ねた。
「教えてくれ。何かあったのか?」
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作者名:ほっぷすてっぷ | 作成日時:2024年1月5日 22時