14.不思議な音 ページ43
善逸は何処か違和感を感じていた。
彼女、梢から聴こえる音がその元凶だ。
彼は耳が特別良かった。
だから人から聴こえる音で、感情や人柄が分かってしまった。それが時には彼自身を苦しめていたのだが。
梢からも勿論音がした。
心音、呼吸音、血が巡る音。生物からする音だ。
しかし、彼女の音は雑音が入った蓄音機のように不安定だった。
要するに、聴こえている筈なのに何も聴こえないのだ。
彼女には音が無かった。
善逸はそんな微かな違和感を感じながらも、気の所為だろうと思考を止めた。
少しの沈黙の後、炭治郎がふと切り出す。
「鬼が怖いっていう善逸の気持ちも分かるが、雀を困らせたら駄目だ。」
「え？困ってた…？雀？何で分かるんだ？」
「いや…善逸がずっとそんな風で仕事に行きたがらないし、女の子にすぐちょっかい出す上に、鼾も煩くて困ってるって…」
炭治郎は自身の掌の上に乗る雀を指差す。
「言ってるぞ？」
「言ってんの！？鳥の言葉が分かるのかよ…？」
縦に頷く炭治郎に、嘘だと善逸が言い張っていると、カァと一鳴きした松衛門がバサバサと上空を旋回し出す。
「駆ケ足！駆ケ足！炭治郎、善逸、梢走レェ！！共ニ向カエ！次ノ場所マデ！走レ！走レ炭治郎、善逸、梢！」
三人を急かす松衛門は、言葉を覚えたばかりの幼児のように何度も伝令を繰り返す。
真面目にそれを聞き取る炭治郎。
一方、善逸は震え出し、顔を青くする。
「ギャァァァ！！！烏が喋ってるぅぅ!!!!!!」
地面にのたうち回る善逸に、炭治郎と梢は、もう何も驚かなかった。
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作者名：ほっぷすてっぷ | 作成日時：2024年1月5日 22時
