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何処からか野鳥の囀りが絶え間なく聞こえて来て、同時に三つの足音が響く。

善逸の嗚咽が鼻を啜る音に変わった時に、炭治郎は優しく話し掛けた。


「どうだ?」

「うん…落ち着いたら、腹減ってきた……」

炭治郎は食べる物が無いという善逸に、懐から包みを出して一つおにぎりを差し出した。

善逸はまだ涙目で鼻水を垂らしたまま、おにぎりを一口食べる。
しかし何かに気付いて炭治郎の方を見た。


「炭治郎は食わないのか?」

「うん。それしかないから。」

それを聞いた善逸は、おにぎりを半分に割って口を付けていない方を炭治郎に渡す。


「ほら、半分食えよ。」

「えっいいのか?ありがとう…!」

炭治郎は明るい口調でおにぎりを受け取る。
彼が悪い人では無いと最初から分かっていた炭治郎だが、それを再確認して何だか嬉しそうだった。

炭治郎はその隣を歩く梢に、梢も食べないかと尋ねる。


「私はいいよ。」

「いいのか?少なくとも、今朝は何も食べてないだろ?」

それでも首を横に振るものだから、炭治郎は半分になった握り飯にありついた。
少し甘い米の食感を味わっていると、頬に米粒を付けた善逸が口を開く。


「えっと…あのぅ……君…」

炭治郎は言い篭る善逸に、またかと少し睨みを利かせるが、善逸はクワッと大きく口を剥き出す。


「違ぇよ!!俺はただちゃんと名前聞いて無かったから尋ねたかっただけなのぉ!」

キーンと響く大声に炭治郎は耳を塞いだ。
梢は少し上を見上げて口を薄く開く。


「…柑子木梢」

少し低めの単調な声が善逸の耳に触れると、彼は目を見開いた。

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作者名:ほっぷすてっぷ | 作成日時:2024年1月5日 22時

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