検索窓
今日:1 hit、昨日:14 hit、合計:599 hit

13-1 ページ38

「うぅ……お願いだよぉ頼むよぅ…!」

「ぇ……ぁ…え…???」



炭治郎は梢を見て何とも言えない気持ちになった。

恐らく初対面であろう人物に、何故か求婚されて困惑しない人なんていないだろうし。
いつも表情が出ない梢が、可哀想な程に分かりやすく困惑した表情を浮かべているのだから。


かと言って声も掛け辛いものだから、どうしたものか頭を悩ませていた。




一方、少年は絝の裾が皺になるのも気にせずに、固く握り締めていた。
目が地面を歩き回るように動いていたが、少年の頭には右往左往する視界も映っていなかった。

除夜の鐘よりも数倍も速く、重く打ち付ける心臓が痛かった。


神頼みのようなうわ言をボソボソと梢に向かって言っていたが、少しの沈黙すら気になって顔を上げてしまった。



紡ぎたての生糸のような髪が、柔らかい輪郭の傍で揺れている。
肌が恐ろしく白く、薄い小さな口が桜色を暈す。

ちょん、と上がった鼻が可愛らしく、短い眉さえいじらしい。
翡翠の瞳を髪と同じ色をした長い睫毛が縁どっている。

自分より一回りも二回りも小さな手や華奢な体。春の陽気のような香り。


それを目にしてしまった途端に、急上昇した体温が体中の水分を蒸発させて、遂に何も言えなくなってしまった。



梢は状況を飲み込めない頭で、必死に考えた。
何故、目の前の少年に求婚され、そして再び黙りこくってしまったのか。

取り敢えず何か言ってみようと、その時は思っていたが、それが間違いだった。

13-2→←13. 黄色頭の少年



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (4 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ほっぷすてっぷ | 作成日時:2024年1月5日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。