12.どうかまた_ ページ36
頬がピリピリと痛むのは、さっき振られた女の子に平手で打たれたから。
今鏡があれば、紅葉形の赤く腫れた跡が見えるだろうに。
でも、そんな事どうって事ない。
あの叶うはずのないと思っていた願いが、たった今叶ったのだから。
あの子だ。
また君に会えた。
─────────
バチンと火縄銃にも負けないくらいの音が響き、辺りの鳥たちが一斉に飛び立つ。
炭治郎と彼の鎹鴉、天王寺松衛門は驚いて音の聞こえた方を向く。
梢もそれを見て延々と続く畦道の先を見た。
地面に蹲ってカタカタ震えながら、涙や鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした奇抜な髪色の少年と、何やら怒っている様子で去って行く少女。
炭治郎と梢は何があったのか困惑していた。
「チュン!」
そんな二人の元に、一羽の雀が縋るように飛んで来た。
雀は炭治郎の掌の上に収まると、身振り羽振りで何かを訴えかける。
炭治郎はウンウンと頷き、梢はその隣で訝しげにそれを見る。
「そうか…分かった…!」
「(何で分かったんだろ……)」
パァっと表情を明るくした雀。
炭治郎はずんずん少年の元へ近寄り、梢も後に続いた。
「なぁ、どうしたんだ?大丈夫か?」
「ぅえっ…?」
炭治郎が手を差し伸べると、少年が後ろを振り向く。
紅葉が咲いた顔は、涙と鼻水に塗れていた。
だが、少年は何故か時が止まったかのように固まり、炭治郎は首を傾げる。
彼の視線の先は、炭治郎の後ろにあった。
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作者名:ほっぷすてっぷ | 作成日時:2024年1月5日 22時