10.月と雪と花 ページ34
彼女と初めて会ったのは、最終選別の夜だった。
会った、と言うのは間違いだ。
言葉を交わして無いし、名前だって知らない。
数多くいた受験者の中で、一番に目がいったのが彼女だった。
彼女の色の抜けた髪が珍しかったのもあると思う。
この変な髪色をした俺も、そんな事言えないのだけれども。
ただ一目見て、なんて綺麗な子なんだろうと思った。
それはもう、今まで初対面の女の子に何度も結婚を申し込んできた俺が、たじろいで動けなくなるくらい。
月雪花は一度に眺められぬと言うが、それは嘘だったのだと今になって思う。
だって彼女は、月も雪も花も、全部持ち合わせていたから。
月みたいな淡い髪に、雪みたいに白い肌。風に吹かれる小さな花のような、可憐な見目形。
最終選別で確実に死ぬだろうからと、神様が女好きの俺に慈悲でくれた、最後のご褒美なのかと思って、その時は勝手に神様に感謝していた。
その後結局運良く生き残ってしまったのだけど、同じく生き残った彼女には話しかけられずしまいだった。
だから次の任務で死ぬ前に、どうかもう一度彼女に会えたらなぁ、声を聴けたらいいなぁ、という不確かな希望が神様に届く事を願った。
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作者名:ほっぷすてっぷ | 作成日時:2024年1月5日 22時