9.ずっと一緒にいる ページ30
炭治郎の市松模様の羽織が、優しく日の光を浴びた。
長い夜の明けだった。
炭治郎は自らの足で屋敷に足を踏み入れ、梢もそれに続く。
真っ暗な室内を、珠世と愈史郎の名を呼びながら進む。
すると、ぼんやりと光る箇所から声がする。
「こっちだ、こっち!」
どうやら地下室の様だった。その階段の手前で二人は止まる。
「別に来なくても良いんだが、来たいなら降りて来い。」
珠世はそう言った愈史郎を叱ると、早くいらっしゃいと、彼らを誘う。
暗い階段を手探りで下ると、人口の灯りが廊下を照らしていた。
そこで待っていたのは、珠世と愈史郎、そして
「あっ!禰豆子…!」
彼女は兄の炭治郎を見つけると、直ぐに駆け寄って彼の腕の中へ飛び込む。
炭治郎もホッとしたように抱き締め返した。
珠世によると、朝を迎える前に光の届かないこの部屋へ移動したらしい。
梢はそんな兄妹を横目で見ていたが、ふと視線を上げた猫の様な桃色の瞳と目が合う。
ポスッと、梢の視界が麻の葉の模様で一杯になる。
「えっ…わ、」
梢がよろけるのを、禰豆子はギュッと抱き留める。
炭治郎は慌てて「強くし過ぎだぞ…!」と禰豆子に言うが、禰豆子はそれに構わず、梢の頭に手を伸ばす。
ポンポン、と慣れたような手つきで梢の頭を撫でる。
「や…やめてよ…」
彼女は年下の禰豆子に頭を撫でられるのに少し複雑な思いを抱き、その手を退かす。
炭治郎はそんな二人をかつての妹弟たちと重ねていた。
「はは、禰豆子は梢の事を、弟か妹だと思ってるんじゃないか?」
「どっちかと言うと私は姉でしょ…」
そう言いつつ炭治郎の言葉を否定しない所、本当に嫌では無いのだと、炭治郎は微笑んだ。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほっぷすてっぷ | 作成日時:2024年1月5日 22時