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喉の奥の空気が掠れて出て来る。
一度止まってしまえば、矢印に追いつかれて終わり。
梢は縺れそうな足を必死に動かしながら、酸欠の頭で考える。
「(一体…っいつまで……!)」
考えるだけ無駄とでも言うように、脳から思考が追い出される。
突然、グイッと足元が引かれる感覚。足元には赤い矢印。
「(しまっ…!)…っう"…」
ドサリと重力に従って倒れる体。
途端にくる痛み。潰れた肺に押し寄せる空気を押し返そうとする息苦しさ。
ぼやける視界で、持ち主を失った着物を確認する。
「はっ…ハァ……(術が解けたんだ…)」
梢は薙刀を地面に突いて体重を乗せると、ゆっくり立ち上がる。
炭治郎はかなり高い所から落ちた。彼の元へいかないと、という一心だった。
生きようと打ち付ける心臓によって急に巡らされた空気に、目眩がした。
「炭、治郎…」
「梢っ…!」
梢は倒れ込んだ炭治郎の元へ、重い足を引き上げながら寄る。
「大丈夫、か…?」
「…君の方が、大丈夫じゃないように見えるけど。足が折れたの…?」
「そうみたいだ…頼む…!肩を貸してくれ。禰豆子たちの所へ…早く向かわないと…」
「無理だよ。足手まといになるだけだ…」
「分かってる。でも頼む…!!」
梢は渋々頷くと、帯革に薙刀を差し込んで炭治郎に手を伸ばす。
どうせ彼は何と言おうと聞かない。彼の頑固さは、今日会ったばかりの彼女にも分かった。
三寸程違う炭治郎の体は梢を覆い隠す程で、ただでさえ小柄な彼女はグラッとよろけてしまう。
「もうっ…重いんだけどっ…!」
「す、済まないと思っている……」
炭治郎は半ば引き摺られる形で、亀の様な足取りで進む梢の肩に手を回していた。
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作者名:ほっぷすてっぷ | 作成日時:2024年1月5日 22時