検索窓
今日:26 hit、昨日:14 hit、合計:624 hit

7-11 ページ26

喉の奥の空気が掠れて出て来る。
一度止まってしまえば、矢印に追いつかれて終わり。

梢は縺れそうな足を必死に動かしながら、酸欠の頭で考える。



「(一体…っいつまで……!)」

考えるだけ無駄とでも言うように、脳から思考が追い出される。

突然、グイッと足元が引かれる感覚。足元には赤い矢印。



「(しまっ…!)…っう"…」


ドサリと重力に従って倒れる体。
途端にくる痛み。潰れた肺に押し寄せる空気を押し返そうとする息苦しさ。

ぼやける視界で、持ち主を失った着物を確認する。


「はっ…ハァ……(術が解けたんだ…)」

梢は薙刀を地面に突いて体重を乗せると、ゆっくり立ち上がる。
炭治郎はかなり高い所から落ちた。彼の元へいかないと、という一心だった。

生きようと打ち付ける心臓によって急に巡らされた空気に、目眩がした。


「炭、治郎…」

「梢っ…!」


梢は倒れ込んだ炭治郎の元へ、重い足を引き上げながら寄る。


「大丈夫、か…?」

「…君の方が、大丈夫じゃないように見えるけど。足が折れたの…?」

「そうみたいだ…頼む…!肩を貸してくれ。禰豆子たちの所へ…早く向かわないと…」

「無理だよ。足手まといになるだけだ…」

「分かってる。でも頼む…!!」


梢は渋々頷くと、帯革に薙刀を差し込んで炭治郎に手を伸ばす。
どうせ彼は何と言おうと聞かない。彼の頑固さは、今日会ったばかりの彼女にも分かった。

三寸程違う炭治郎の体は梢を覆い隠す程で、ただでさえ小柄な彼女はグラッとよろけてしまう。



「もうっ…重いんだけどっ…!」

「す、済まないと思っている……」


炭治郎は半ば引き摺られる形で、亀の様な足取りで進む梢の肩に手を回していた。

8.呪い→←7-10



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (4 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ほっぷすてっぷ | 作成日時:2024年1月5日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。