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炭治郎の切先が震える。


矢琶羽の首は簡単に斬れない。

正確に技を打ち込める隙を与えてくれないのだ。技は寸分の狂いもなく打ち込まなければ、その威力は劣る。


「___郎__炭治______炭治郎!」

「っは……!!」

梢の声が、暗闇から急に飛び出たように炭治郎を呼ぶ。

敵前で彼女の呼び声も聞こえなかったなんて、と炭治郎は気を引き締め直す。
梢はそんな彼を見て、口を開ける。


「…私が脚を斬る。」

「!!」

炭治郎の震えがピタリと止まる。
彼女の言い分が、まるで自分の考えが分かっていたかのように聞こえたからだ。

脚を斬れば動作を止められ、その分技を正確にあてられる。

それはそうとして…


「無茶だ…!せめて一緒に…」

「炭治郎は首ね。」

「(無視っ…!)」

梢のペースは掴めない、と炭治郎は思った。


「でも…どうやっ…!」

そう言い切る前に梢は空高く飛び上がる。
ふわりとスカートが舞ったのも束の間、矢印は逃すまいと彼女を追いかける。



「!」

「グッ……小癪な…!!!」

そこに見えない踏み台があるかのように、彼女は踊る。
炭治郎はその軽やかさと恐ろしく速い動作に目を見張った。


「(鞠鬼の腕を斬った時にも思ったけれど……速い…!!)」


鞠鬼の腕を斬った時。

炭治郎と梢は同時に鬼に向かって駆け出したものの、炭治郎が敵の合間に入る前には既に、彼女は鞠を斬り終わっていた。


炭治郎の刀を握る拳が固くなる。


「(首を斬れなんて…俺はあんな風に速くは動けないのに……どうすれば…!)」

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作者名:ほっぷすてっぷ | 作成日時:2024年1月5日 22時

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