春の病 3 (ページ9)

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　スマイルを無事歌い終わって、カメラの後ろでわちゃわちゃされていたSixTONESさんと一緒に楽屋の方まで歩いていく。

「氷織さん」
「なに？」

　一緒、と言ってもたまたま楽屋に帰る時間が被っただけで特に喋ったりということはない。ついさっきまでは。
　新しい衣装に身を包んだ松村くんはどこか緊張した面持ちで私の横に並んだ。なかなか続きが来ないので、もしかしたら、言いづらい内容なのかもしれない。

「松村くん、踊らないって言ってたのに凄い踊ったね」
「あぁ、あれはちょっとね…」

　少しだけ表情を緩めた松村くんは前を歩くSixTONESの人達に一度視線を向けて、もう一度私を見つめる。

「あの、さ」
「はい」

　ただの楽屋までの廊下の筈なのに、何故か背筋が伸びる。松村くんの緊張がこっちまで移ったみたいだった。

「ちょっと、散歩行かない？」
「散歩、ですか」
「すぐそこの毛利庭園気になってたんだけど、メンバー誰も興味無いって言うからさ」
　
　1人で行けばいいじゃないですか、とは言えなかった。そんな突き放すようなこと好きな人に言えるはずがない。
　僅かな逡巡。リスクと楽しみ。週刊誌の危険性。色んなことを考えて、結局浮かれた恋心が僅かに勝った。

「わかった」

　何か、話があるみたいだし。
　私が頷くと、松村くんはホッと息をついた。