春の病 3 (ページ46)

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ご飯を一緒に食べて、それぞれお風呂を入って、ソファに並んでテレビを眺めながら穏やかな時間を過ごしていると、不意に氷織ちゃんが俺に向けて手を広げる。

　抱きしめて欲しいのだろうか。氷織さんからのおねだりならもちろん、よりくっつけるチャンスにくっつかない選択肢はない。
　
「ん？ギューする？」
「こっち」

　氷織さんの背中に回そうとした腕が掴まれて、腰の方に誘導されたかと思えば、彼女の細い腕が後頭部に回ってそのまま引き寄せられる。

「んえ」
　
　顔が埋まって、体が硬直する。柔らかーーこの子下着つけてないの？少し身じろぐと、柔らかいなにかはいとも容易く形を変える。
　ぎゅうと俺の頭に回された腕の力が強まる。まてまてまてまて。
　別に息苦しいという訳では無いけれど、これは良くない。この子本当に警戒心というものが無い。いくら彼氏と言えど無警戒過ぎないか？いや、警戒されても悲しいけれど。

「氷織ちゃん今度はどうしたの……？」
「いいからいいから。私に甘えてよ」

　ね？と、起き上がろうとする俺を阻止するように氷織さんは強めの力で頭を撫でてくる。
　いや、嬉しいけども。顔に当たっている？埋めさせてもらってる？ものは1人の男からしたらご褒美以外の何物でもないし、頭撫でてもらえるのも嬉しいけれど。
　これは本当によくない。