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「氷織ちゃんってキス好きなの？」
室内にはどことなく甘い雰囲気が漂っていた。もちろん、実際そんなことは無い。ここは氷織ちゃんの家ではなく、俺の家なのだから。
「好き、かな……」
ソファに座る俺の上に跨るような体勢の氷織ちゃんは、頬に添えられた手に擦り寄ると、視線を逸らしながら言う。
「なんかポヤポヤして、気持ちいいから」
ギュン、と胸がおかしな音を立てた。勿論これは比喩だけど、それくらい胸というか理性にきた。
…これはよくない。
…とてもよくない。
「んーじゃ、もう寝よっか。明日氷織ちゃん、朝早いでしょ？」
氷織ちゃんの肩をトントンと叩くけど、彼女は立ち上がろうとしない。そればかりかぎゅっと抱きついて、上目遣いでこちらを見つめてきた。
「北斗くん」
「なぁに？」
「…私って魅力ない？」
「んづっ…！」
変な声出た。あまりの可愛さに変な声出た。
氷織ちゃんは自分の柔らかいところを押し付けるみたいに抱きついてくるから、多分そういうこと。
…これはよくない。
…とてもよくない
「氷織ちゃんに魅力がないって訳じゃないのよ。それは断じて違う」
「…じゃあ、なんで」
病人役の役作りで減量している氷織ちゃんは本当に力の加減を間違えたら折れそうな程に細い。
「大好きで、可愛くて、魅力を感じてるから大事にしたいの」
少し痩けた頬に手を添えて、上を向かせる。
「大事にさせてよ」
額をくっつけてオニキスのような瞳と見つめ合う。分かった、という小さな返事を聞いて、唇を重ねた。
「だから、今はこれで我慢。ね？」
「…はぁい」
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作者名：綴 | 作成日時：2023年1月22日 14時
